眞子様を助ける妄想のガイドライン その2

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684水先案名無い人:04/11/22 14:28:41 ID:AJZ6WApo
眞子ってなんて読むの?
685水先案名無い人:04/11/22 14:30:12 ID:AJZ6WApo
まんこ



と答えたくなる衝動を必死で抑えました
686水先案名無い人:04/11/22 14:31:43 ID:AJZ6WApo
【狼牙風風拳!】
>>1 はヤムチャ?
687水先案名無い人:04/11/22 14:33:13 ID:AJZ6WApo
新スレ立ったんですね。>>1乙です。
新スレを祝して久しぶりに何かSS書こうかな、
とか思ったんだが、さしあたってネタが思いつかん…。

実は、以前書いてた「嗚呼!」を連発する長編の後日談とか構想してるんだけど、
なかなか時間がとれんのよ。ええトシこいて受験生なもんで。

とりあえず即死回避パピコ。
688水先案名無い人:04/11/22 14:34:44 ID:AJZ6WApo
左右召喚age
689水先案名無い人:04/11/22 14:36:15 ID:AJZ6WApo
昨日のTBSの皇室番組で愛子の目にうっすらと二重が
690水先案名無い人:04/11/22 14:37:46 ID:AJZ6WApo
呼び捨てとは失敬な!

昨日脳内の皇室番組で眞子様のほっぺがうっすらとした羽二重餅に見えた
思わず吸い付きたくなった
691水先案名無い人:04/11/22 14:39:17 ID:AJZ6WApo
こっちもよろしく

眞子様のSSを書くスレ Part1.5
http://temporarypage.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/test/test/read.cgi/mako/1094828391/
692水先案名無い人:04/11/22 14:40:47 ID:AJZ6WApo
また腐ったスレが一つ増えた。
「これでコテハンデビューだ!」
「メンヘル板の有名人だ!」
「相談にものっちゃうぞ!」
がドキドキしながらたてたスレは、
大方の予想通り(を除く)、どうしようもないレスばかりがついた。

ここではあわてふためく。
1 「ネタだったことにしちゃおうか?」
2 「自作自演で盛り上げようか?」
3 「逃げ出して別のスレでもたてようか?」
さあ、いったい、どれを選んだら良いのでしょ〜か?

1を選んだへ。
それは「ごまかし」です。あなたは「嘘つき」です。

2を選んだへ
それは「まやかし」です。あなたは「嘘つき」です。

3を選んだへ。もう書くのが疲れました。
言いたいことは上と同じです。

そろそろ認めるべきです。
あなたは自己顕示欲だけはいっちょまえだが、 その欲望を満たすだけの能力がない。
努力はしないくせに、注目を浴びている自分ばかり妄想している。卑屈な笑いだけが特徴のつまらない人間だ。

せっかく必至で考えたコテハンが無駄になってしまいましたね(笑)
そして今日も良い天気!
693水先案名無い人:04/11/22 14:42:18 ID:AJZ6WApo
すまん誤爆しました。
694水先案名無い人:04/11/22 14:43:49 ID:AJZ6WApo
「プールの中で走ってはいけないぞ。腰洗い槽だったからまだよかったものの、転んで頭を打ったらどうする」
姫殿下が強い口調でお叱りになった。
「ごめんなさい、お姉様……」
俯かれたカコ様の制服からは水滴が滴り落ちている。
おれは1歩進み出て奏上した。
「姫殿下、私がプールのことを申し上げたのがいけなかったのです。お叱りは全て私が甘受いたします」
姫殿下はおれが頭を下げようとするのをお手でとどめられた。
「いや、そなたに落ち度はない。カコ、藤村の側についていなさい。勝手に走りまわってはいけないぞ」
「はい、お姉様」
カコ様はすっかり小さくなっておられた。
「帰りはわたしの体育着を着て帰りなさい」
「ありがとうございます、お姉様」
姫殿下はひとつため息をつかれると、表情を和らげられた。
「それでは皆さん、演奏をよろしくお願いします」
ひとつ頷いた新井さんがタクトを振ると、バンドは『雨に唄えば』を吹き始めた。
彼女たちを引き連れた姫殿下は更衣室を通ってプールにお入りになった。
カコ様とおれは行列の最後尾についた。
「びしょ濡れになっちゃったわねえ」
カコ様にもいつもの笑顔が戻った。
「御一人だけプールから上がられたみたいですね」
「そうねえ……あっ、そうだ。まめ飴、まめ飴……あーっ、全部びしょびしょになってる!」
カコ様はじっと残りの飴を見つめておられたが、意を決して全てお口の中に放り込まれた。
「塩素くさーい」
顔をしかめられながら、カコ様はがりがりと飴を噛み砕かれた。

プールの中は体育館の中よりも遥かに音を響かせた。
一行が侵入するとすぐに水泳部員が1人飛んできた。
「何なんですか、あなたたちは!?」
姫殿下は丁寧に自己紹介し、来意をご説明あそばされた。
695水先案名無い人:04/11/22 14:45:21 ID:AJZ6WApo
姫殿下のお話を拝聴した水泳部員は露骨に嫌な顔をした。
「いやあ、それはちょっと……」
「ちょっとすいません」おれは先ほどと同じように割りこんだ。

「……わかりました。演説を伺うことにします」
またしてもおれの街宣右翼的論法により敵の野望は打ち砕かれた。
ふと見るとカコ様がやけになられたのか、プールサイドに腰掛けて思いきりバタ足をされていた。
おれは姫殿下に恫喝の成果をご報告申し上げた。
「そうか、それはよかった。では早速演説をしよう」
姫殿下は満足げにおっしゃった。
「演説台はどちらに置けばよろしいでしょうか?」
おれがそうお尋ねすると、姫殿下はあたりをご覧になってからおっしゃった。
「いや、演説台はいい。あのスタート台の上に立って行おう」
姫殿下がスタート台のうえに立たれると、水泳部員たちが水から上がってこちらにやって来た。
プールの向こうではカコ様がコースロープ綱渡りに挑戦されていたが、2mほど進んだところで静かに水没された。

「プール上がりのアイスは最高ねえ、お姉様」
姫殿下のシャツとブルマをお召しになったカコ様がアイス片手に満面の笑みを浮かべられておっしゃった。
「そうだな。ご馳走してくれた藤村に御礼を言いなさい」
「はい。藤村さん、どうもありがとうございます」
カコ様に頭を下げられて、おれは恐縮した。
「いえ、お気になさらずに。大人の経済力にかかればアイスの20個や30個……」
「藤村さん、ご馳走になります」
「まーす」
平沢さんと下川さんがお盆を持っておれの前を通り過ぎていった。
「あっ、あなたたち、何でカレーも頼んでるんですか!?」
「あ、冷と暖のバランスを取ろうと……」
「いいじゃん、カレーの1杯や2杯。あんた公務員でしょ? 給料もらってんでしょ?」
下川さんに完全に逆ギレされたおれは、それ以上の追及はやめて自分のガリガリ君に集中することにした。
696水先案名無い人:04/11/22 14:46:53 ID:AJZ6WApo
左右さん
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
697水先案名無い人:04/11/22 14:48:24 ID:AJZ6WApo
プールサイドでカレー(゚д゚)ウマー
698水先案名無い人:04/11/22 14:49:54 ID:AJZ6WApo
藁板のスレと相互リンクしておこう

こんな眞子さまはイヤだ!!
http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/owarai/1090940317/
699水先案名無い人:04/11/22 14:51:25 ID:AJZ6WApo
700水先案名無い人:04/11/22 14:52:56 ID:AJZ6WApo
空気嫁
701水先案名無い人:04/11/22 14:54:27 ID:AJZ6WApo
姫殿下とカコ様は吹奏楽部員たちとご歓談されていた。
並んで座ったおれと下川さんと新井さんはそれを眺めていた。
「ねえ、下川」と新井さんが言った。
「今日行った部ってさ、昔はもっと活気があったと思わない?」
「うん。私が1年のとき剣道部員はあの倍くらいいたと思う」
下川さんがお茶をすすりながら言った。
「今はどこの部も苦しいのかな……
文化部でちゃんと活動してるのって私のところと下川の美術部くらいじゃない?」
「そうだね。書道部もなくなっちゃったし」
「あなたは何で書道部じゃなくて美術部に入ったの?」
「……やっぱり楽しかったからかな。先輩がよくしてくれたし。雰囲気がよかったの」
そう言って下川さんは姫殿下の方を見て目を細めた。
「ねえ、藤村さんは中学時代何部だったの?」
下川さんがおれの顔を覗きこんで尋ねた。
「私は帰宅部でした」
おれがそう答えると、下川さんは納得した様子で頷いた。
「でも皆さんを見ていると、あの頃部活をやっていればよかったなあって思います」
「何言ってんの? あなたは美術部員よ」
下川さんがおれの肩を叩いて言った。
「え、そうなんですか?」
「そうよ。まあ、身分的には筆洗バケツのやや下くらいだけど」
おれの暗かった学生生活はここに来て埋め合わされ始めたようだ。
吹奏楽部員に混じった姫殿下とカコ様がお顔を真っ赤にして大きな木管楽器を吹いておられるのが見えた。
702水先案名無い人:04/11/22 14:55:59 ID:AJZ6WApo
翌日は朝から曇りだったが、午後になって雨が降り出した。
雨音のせいかいつもより終鈴が遠く聞こえた。
「では木田さん。美術室に行ってきます」
そう意っておれは新聞を折りたたみ、傘を開いて守衛室を出た。
並木道には1人の生徒の姿もなかった。
「何か閑散としてますね」
とおれは言った。
木田さんは守衛室の窓口から顔を出した。
「雨の日の学校は静かなものですよ。静かで美しい。
でもね、この学校で一番すばらしいのは雨上がりの直後です。空気の香りが何とも言えない。
藤村さん、もし雨が上がったら深呼吸してみてください」
おれは手で了解の合図をして美術室に向かった。

美術部員たちは自分の創作に没頭していた。
いつもなら弁当を鬼食いしている下川さんも手鑑を見ながら筆を走らせている。
おれは姫殿下のお側に参った。
「姫殿下、本日の選挙運動はいかがなさいますか?」
「うん、それがなあ……」姫殿下が画筆を休められておっしゃった。
「外でビラを配ろうと思っていたのだが、この雨では無理だな」
近くの机に置かれたビラには「明るい勤王」と書かれていた。
それが具体的にどういう行為を指すのかは定かでないが、
佐幕派暗殺とか画像を集めてハァハァするといった行為とは正反対のものであることだけは確かだ。
「うおおおお、だめだああああ」下川さんが頭をかきむしりながら立ち上がった。
「腹が減って集中できない! 私、ちょっと学食に行ってくる」
「部長、私も行きます」三鷹さんがマウスから手を離して腰を上げた。
「ねえ、マコちゃんも一緒に行かない? もしかしたら学食で雨の上がるのを待っている人がいるかもしれない」
それをお聞きになった姫殿下のお顔がぱっと明るくなった。
「はい、行きます!」
姫殿下はビラの束を引っつかまれると、その側に置いてあったたすきをジャージの上からお召しになった。
703水先案名無い人:04/11/22 14:57:30 ID:AJZ6WApo
いつの間にかその2が…
1さん乙です。
704水先案名無い人:04/11/22 14:59:01 ID:AJZ6WApo
学食は八分くらいの入りだった。
しかしきちんとした食事を採っている生徒は少なく、雨宿りついでにジュースを飲んでいるといった手合いがほとんどだった。
「ここは手堅く月見そばに半ライスと行くか……」
何が手堅いのかはわからないが、下川さんはそう言い残して麺類のカウンターに向かった。
そのとき学食のおばちゃんに注文をしていたジャージ姿の生徒が振り向いた。
「あっ、下川!」
「むっ、獄門島!」
バスケ部部長の獄門島さんは下川さんの姿を認めると凶悪な視線をぶつけてきた。
その横にはバレー部部長の八つ墓村さんにソフト部部長の病院坂さんが立っていて、毒々トロイカ体制を確立している。
おれは立ちすくんでおられる姫殿下にそっと耳打ちし申し上げた。
「姫殿下、何だか雰囲気が悪うございますから、ここは美術室に戻られた方がよろしいかと……」
「そうだな、そうしよう」
下川さんとにらみ合っていた獄門島さんがこのひそひそ話に気付いてこちらをちらりと見た。
「どうしてここに? ……そうか下川は美術部だったね。だからそっちに荷担してるわけだ」
「あんたこそ安藤のパシリやってるんだって?」
どうやらこの2人は非常に仲が悪いらしく、早くも一触即発のムードだ。
おれがそれを無視して姫殿下を先導し申し上げようとしたとき、下川さんがすたすたとご飯類のカウンターに歩いていった。
「獄門島、あんた何頼んだの?」
下川さんの突然に問いに獄門島さんの表情に微かな動揺の色が浮かんだ。
「え……? 掛けうどん半ライスだけど……」
「おばちゃん、かき揚げ丼! 味噌汁・お新香つきで!」
下川さんは食堂中に響き渡る大声で注文した。
かき揚げ丼、味噌汁・お新香つき……何と力強い組み合わせであろうか。
確かに麺類+ライスは炭水化物を摂取するには最適だ。
だがその機能性ゆえにか、それを食する行為は“摂取”とでも呼ぶべき、誤解を恐れずに言えば“餌”的な色彩を帯びる。
しかし丼・味噌汁・お新香とくればそのメニューとしての完全性たるや……
それを食する者は精神的貴族に位置付けられる。
「むむむ……」
獄門島さんが低く唸った。
705水先案名無い人:04/11/22 15:00:34 ID:AJZ6WApo
そのとき八つ墓村さんが1歩進み出て言った。
「ラーメン、掛けそば、ライス大盛り!」
「うっ……」
下川さんがひるんだ。
確かにここまで機能性を追及されれば、そこに志士的な潔さを感じずにはいられない。
(どうする下川さん……)
突然姫殿下が厨房に飛びこまんばかりの勢いでカウンターに駆けて行かれた。
「かき揚げ丼・味噌汁・お新香、それから小カレー!」
「なにィッ!?」
姫殿下の電光石火のご注文に食堂中がどよめいた。
小カレー……それ自体では決して迫力のあるものではない。
だがカレーは回転が速いためご飯類とは別のカウンター。
途中で気が変わったからといって越えることのできぬ、三十八度線にも等しい境界線がそこには存在する。
それを軽々と注文してのけるとは……まさに食のコスモポリタンである。
「病院坂、あんたは何頼む?」
八つ墓村さんが傍観していた病院坂さんに迫った。
「え? いや、私はそんなにおなかも空いてないし……」
「ラーメン、掛けそば、ライス大盛り、小カレー!」
獄門島さんが厨房の奥まで響けとばかりに叫んだ。
それに対抗して下川さんもカウンターにのしかかるような姿勢で怒鳴った。
「おばちゃん、あそこの冴えない男の人にかき揚げ丼・味噌汁・お新香、カレー大盛り、ゆで卵!」
(おれも食うのか……)
おれの隣にいた三鷹さんも自分の運命を悟ったようで、すでに泣きが入っていた。

15分後、おれと三鷹さんはかき揚げ丼を半分空けたあたりでグロッキーになっていた。
「藤村さん、私もう限界……」
三鷹さんがうなだれていった。
「私もです……心苦しいがカレーは残すしか……」
そこへ早々と完食しビラも配り終わった姫殿下と下川さんが戻っておいでになった。
「何だ藤村、カレーが手付かずではないか」
姫殿下のお言葉におれは恐縮するしかなかった。
706水先案名無い人:04/11/22 15:02:06 ID:AJZ6WApo
面白すぎるw♪
707水先案名無い人:04/11/22 15:03:36 ID:AJZ6WApo
ハゲワロタw

毎回毎回GJGJGJ
708水先案名無い人:04/11/22 15:05:07 ID:AJZ6WApo
「三鷹、あんたさっきから全然減ってないじゃん」
下川さんが三鷹さんの肩をもみながら言った。
「すいません…………」
三鷹さんが小さな声で答えた。
「藤村ももっと食べないと大きくなれないぞ」
そうおっしゃる姫殿下におれはご飯を咀嚼しながら頷いた。
「しょうがない、カレーは私が食べてあげる」
「わたしもちょっと手伝ってあげよう」
下川さんと姫殿下がカレーの皿をお手元に引き寄せられた。
「ありがとうございます…………」
そう申し上げたものの、おれは被害者なのではないかという疑念を拭いきれなかった。
「うん、おいしいおいしい。やっぱりカレーは別腹ね、マコちゃん」
「そうですね、部長。それにこのゆで卵が何とも……」
2人はもしゃもしゃとカレーを平らげていった。
ようやくおれのかき揚げ丼もあと一口というところまできたとき、紙の束を抱えた生徒が食堂に飛びこんできた。
「号外でーす。討論会が開催されまーす。生徒会長候補が直接対決しまーす」
そう言いながら、テーブルを回って紙を配り始めた。
「姫殿下、いま生徒会長候補がどうとか言っていましたが……」
「うん。でもそんな話は何も聞いていないぞ」
姫殿下はかりかりと福神漬けをかじりながらおっしゃった。
「ちょっと私、話を聞いてくる」
そう言って下川さんが席を立った。
見ていると下川さんは話を聞くどころか、紙を配る生徒の首根っこを捕らえてこちらに引っ立ててきた。
「さあマコちゃんの前でちゃんと説明しなさい」
組み伏せられた生徒は姫殿下のたすきを拝見してはっと驚いた顔をした。
「わ、私は何も知りません。急に新聞委員は集まれという呼び出しを受けて、行ってみるとこれを配って来いと言われただけで」
弁明する生徒から下川さんが紙を1枚奪い取ってテーブルの上に広げた。
「生徒会長候補討論会 主催 選挙管理委員会 共催 新聞委員会、放送委員会……あんたも関わってるんじゃない」
「いえ、私たち1・2年生は何も知らされていませんでした。本当にさっきこのビラを渡されてはじめて知ったんです」
哀れな新聞部員はすっかり怯えきっていた。
709水先案名無い人:04/11/22 15:06:40 ID:AJZ6WApo
下川さんは納得いかない様子でその新聞部員を解放した。
「28日……来週の月曜日ですね」
「投票は30日だから結構重要なイベントね」
「何か嫌な感じ。マコちゃんに知らせなかったのは絶対嫌がらせだよ」
下川さんが憤慨した顔で言った。
「でもまだ5日ありますから。準備はできます」
姫殿下はいつもの穏やかなお顔でおっしゃった。
ふと食堂の入り口に目をやると、獄門島さんご一行が出て行くのが見えた。
(ん……? あの3人、ビラを持っていない。もしや前から討論会のことを知っていたのでは……)
おれはじっくり観察しようとしたが、獄門島さんと目が合って思いきりにらまれたので、慌てて目を逸らした。

食堂を出ると雨は上がっていた。
「あーあ、何かあいつらのせいで嫌な気分になったから食べた気がしない」
下川さんがそう言う側で三鷹さんが切れそうになっているのをオーラで感じた。
「んー…………」
姫殿下は大きく伸びをされていた。
「姫殿下もあの雰囲気でお疲れですか?」
とおれはお尋ねした。
「いや、ただ雨上がりのいい匂いがするから深呼吸してみたんだ」
「雨上がりの匂い……でございますか?」
木田さんの言っていたことを思い出して、おれも思いきり息を吸い込んでみた。
すると確かに鮮烈でなぜか胸がどきどきするような匂いがした。
「本当だ。森の中にいるみたいですね」
下川さんがおれたちの姿を見て目を細めた。
「ねえ、美術室に帰ったらみんなで散歩しようか。林の中を通って葉っぱから落ちる雫を浴びるの。どう?」25
「賛成! 私は第2グラウンドの芝の上を裸足で歩きたいな」
「藤村、こういうときに池の側に行くとカエルがいっぱいいるんだ。それから百葉箱の下でいつも雨宿りする猫が……」
自分たちの学校の美しさを自然に口に出せる彼女たちを見ていると、
学校の中に居場所がなかったのはおれにそれを見つける目がなかっただけなのかもしれないと思えてきた。
710水先案名無い人:04/11/22 15:08:12 ID:AJZ6WApo
OVA化キボンヌ。
711水先案名無い人:04/11/22 15:09:43 ID:AJZ6WApo
翌日、守衛室待機を命じられていたおれは新聞を読むともなく眺めていた。
1面には「糸己宮さま、ハシジロキツツキを観察 営巣行動の撮影、世界初――キューバ」という見出しが躍っている。
密林を写した写真には「ハシジロキツツキにカメラを向ける糸己宮さま(右から2つ目の茂み)」というキャプションが付けられていた。
おれはその写真をためつすがめつ、裏返したり日光に透かしたりダブルクリックしたりしてみたが糸己宮様のお姿を発見することはできなかった。
「藤村!」
突然姫殿下のお声が聞こえた。
顔を上げると、たすきをお召しになった姫殿下が守衛室の窓口からお顔を覗かせておられた。
「藤村、演劇部に行くぞ!」
「はい!」
おれは新聞を放り出して守衛室から飛び出した。

演劇部室は旧校舎3階の薄暗い廊下を行った突き当たりにあった。
「失礼します」
ノックしてドアを空けると、意外にも室内はまばゆい光に満ちていた。
部屋の中央ではミニチュアの家があり、その前で1人の生徒がうずくまっている。
「あの……わたくしこの度生徒会長に立候補いたしました……」
姫殿下が自己紹介を始められると、その生徒は振り向いてしょぼしょぼした目をこちらに向けた。
「ああ、あなたがマコさんね。吹奏楽部の人から話はきいたわ。私、演劇部のラストサムライ、2年の上杉です」
そう言って上杉さんは姫殿下と握手した。
おれは自己紹介ついでに地べたに置かれた謎の平屋ドールハウスについて尋ねてみた。
「ああ、これ? これはクレイアニメ用のセット」上杉さんは粘土の人形を手に取った。
「なんせ部員が私1人しかいないものだから……」
いきなり辛気臭い話を聞かされてしまった。
「これを少しずつ動かして撮影するんですね」
姫殿下は興味深そうに犬の人形を見つめておられた。
「そう。今『遊星からの物体X』を撮ってるんだけど、なぜかコミカルになっちゃうのよね。何でだろ?」
それはクレイアニメだからではないですかと言おうかと思ったが、空気が余計湿っぽくなりそうなのでやめておくことにした。
712水先案名無い人:04/11/22 15:11:15 ID:AJZ6WApo
「それで……衣装だよね。こっちの部屋へどうぞ」上杉さんが人形を置いて、“準備室”という札のついたドアを開けた。
「昔はいろいろ賞取ったりして力があったから小道具とか衣装とかはたくさんあるのよ」
一歩その部屋に足を踏み入れると、こもった臭いが鼻をついた。
「うわあ、すごい」
五月みどりの衣装部屋さながらの光景に姫殿下がお声を上げられた。
ハンガーにかけられた衣装がびっしりと壁を覆っていて、歩くスペースもないほどだ。
「すごーい! ほら藤村、お姫様だお姫様」
姫殿下はピンクのドレスをお体に当てておられた。
(む、衣装をお召しになって街頭演説をされるおつもりか……)
おれはすばやく周囲に目を走らせ、猫耳メイド服、ミニスカサンタ、地球連邦軍機動歩兵装備などを発見していた。
(まずい……姫殿下があのような下賎な姿に身をやつされることなど想像するだにあさましい。
ここはこのドレスで手を打っていただくしか……)
「なかなかお似合いで」
「うわあ、何ですかこれは?」
姫殿下はすでに部屋の奥へと進まれていた。
「ちょっと出してみようか」
上杉さんが衣装の中に上体を突っ込んで、巨大な黒い物体を引きずり出した。
「うわあ、藤村、クマだクマ」
「クマ!?」
姿を現したのは体長2mはあろうかというハイイログマだった。
「これは20年くらい前にうちの部が『なめとこ山の熊』で使った着ぐるみよ。すごいでしょう」
「クマ……」
姫殿下は上杉さんの説明などお耳に入らぬご様子でクマをうっとりと眺めておられた。
(まずい……猫耳ならともかく全身獣になられるのはいかにもあさましい。せめてこれだけはやめていただかなくては……)
「あのー、姫殿下、せめてお顔はお隠しにならぬ方が」
「藤村、ちょっと着てみないか」
姫殿下がニヤニヤしながらおっしゃった。
(おれかよ…………)
713水先案名無い人:04/11/22 15:12:46 ID:AJZ6WApo
   ∩___∩  ・・・             
   | ノ  u   ヽ               
  /  ●   ● |               
  | u  ( _●_) ミ             
 彡、   |∪|  、ミ       ホヒー・・・クマー       
/ __  ヽノ  _\    ○_○   
(___)___(__)___(´(エ)`)_  
_ _ _ _ _ _ _ U ̄U_ |    
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714水先案名無い人:04/11/22 15:14:17 ID:AJZ6WApo
ワラタ
715水先案名無い人:04/11/22 15:15:48 ID:AJZ6WApo
念のためほしゅ
716水先案名無い人:04/11/22 15:17:18 ID:AJZ6WApo
http://academy3.2ch.net/test/read.cgi/history/1093526288/l50
眞子さまの名前があがってるぞ。
717水先案名無い人:04/11/22 15:18:49 ID:AJZ6WApo
「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから入ってみないか」
姫殿下が熱っぽい調子でおっしゃった。
(むう、どうしたものか……?)
過去を振り返ると「入らないか」と言われて入ったものは写真同好会、中野のキャバクラ、ホモの先輩の家などろくなものがなかった。
それにおれは『火の鳥 ヤマト編』を読んで以来、閉暗所恐怖症だ。
「ほら、頭を外してから背中のファスナーを開けて着るんですよ」
上杉さんが一方的にレクチャーを始めた。
仕方なくおれは興味があるふりをしてクマの内部を覗きこんだ。
そのとき、まるでナッパ様が「クン」とやった指が直で鼻に突き刺さったような痛みが走った。
「うわあっ、は、鼻が……!?」
「これは着ぐるみに染み付いた先人たちの血と汗と胃液が発酵してこのようなイヴォンヌの香りを……」
「だめだだめだこれはだめだ!」
おれは鼻を押さえながら飛び退った。
「そうか……だめか……」
姫殿下が残念そうなお顔でおっしゃった。
おれの目には涙がにじんでいたが、姫殿下のお手がクマの頭をなでなでされるのを見逃さなかった。
(むっ、なでなで? ということは……)
姫殿下、クマをなでなで

クマの中の人=おれ

姫殿下、おれをなでなで

(゚д゚)クマー
「藤村、入ります!」
おれは靴を脱ぎ捨て、着ぐるみに足を突っ込んだ。
おれが入らなければどこのクマの骨もとい馬の骨とも知れぬ輩が姫殿下のご寵愛を賜ることになってしまうかもしれないのだ。
「おお、やってくれるか!」
姫殿下は破顔一笑された。
718水先案名無い人:04/11/22 15:20:20 ID:AJZ6WApo
「はい、じゃあこれ被って」
上杉さんがクマの頭部をおれに手渡した。
ボディから漂ってくる臭気ですでに小鼻がもげそうだった。
(だが口で呼吸をすれば耐えられないことはないはず……)
「あ、口の部分はふさがってるので鼻で呼吸してくださいね」
「まじっすか!?}
上杉さんの言葉に思わずクマの頭を取り落としそうになった。
そのまま放り出して帰りたくなったが、姫殿下が期待をこめておれの方をご覧になっている。
(うう…………コンボイ司令官! おれに力を貸してください!)
おれは一息にクマの頭を装着した。
「ヘッドオンッ!!」
おれの視界が一瞬にして狭くなった。
「ぐああああ、暗い! 狭い! 臭いッ!」
「上杉さん! クマが唸ってます!」
姫殿下が心配そうに上杉さんの方を振り向いておっしゃった。
「ああ、これ被っちゃうと中の人の言葉はよく聞こえないのよね」
(そんな……じゃあおれは本当の獣になってしまったのか……)
「藤村、こちらの言葉は聞こえるか?」
姫殿下のお尋ねにおれは大きく頷いた。
すると姫殿下はおれの頭をぎゅっと抱きしめられた。
「おお、かわいいのう、おまえは」
(むむむ、これは……)
「ぽこたん、ぽこたん。お前は今日からぽこたんだ。ねえー、ぽこたん」
(ぽ、ぽこたん……)
早速ホーリーネームを頂戴してしまった。
「ぽこたん、いい子だ、よしよし。ふわふわだなあ、お前は」
姫殿下がおれの顔に頬擦りをされている。
(イ、インしてよかったお!)
こんな素晴らしいボディコンタクトを頂戴する私は、きっと特別な存在なのだと感じました。
719水先案名無い人:04/11/22 15:21:52 ID:AJZ6WApo
禿藁!
720水先案名無い人:04/11/22 15:23:23 ID:AJZ6WApo
ヴェルタースオリジナルワロタ
721水先案名無い人:04/11/22 15:24:54 ID:AJZ6WApo
やっべハゲワロタ
722水先案名無い人:04/11/22 15:26:24 ID:AJZ6WApo
これどっかにまとめサイトでも作って著作権主張しとかないと、
バカが同人とかで出しそうだな。
723水先案名無い人:04/11/22 15:27:55 ID:AJZ6WApo
ネタ具現化委員会に提出した者勝ち
724水先案名無い人:04/11/22 15:29:26 ID:AJZ6WApo
ぽこたんむっちゃワロタ
725水先案名無い人:04/11/22 15:30:57 ID:AJZ6WApo
デヴ問題と混ぜちゃダメ!
有毒ガスになるぞ
726水先案名無い人:04/11/22 15:32:28 ID:AJZ6WApo
「おいで、ぽこたん。手の鳴る方へ」
姫殿下のお誘いに従って、クマのおれは準備室を出て演劇部室に戻った。
口がふさがっているせいで少し動いただけで息が切れる。
おまけに鼻の粘膜がやられたのか鼻水が止まらない。
(くそっ、『アビス』の潜水服の方がまだましだぜ)
おれが動かずに呼吸を整えていると、姫殿下がおれの目を覗きこんでおっしゃった。
「ぽこたん、ちょっと掌を見せておくれ」
おれは右手の珍味を差し出した。
姫殿下はそれをぎゅっと握り締めあそばされた。
「おお、肉球……大きいなあ、ぷよぷよだなあ」
特大肉球を突ついておられる姫殿下をおれはクマの中から生暖かく見守っていた。
…………5分後、姫殿下はまだおれの手をお放しにならなかった。
クマの中のおれの体勢は前傾気味なので、床についた左手に強い負荷がかかっている。
(そろそろ手を離してくださらないだろうか……)
だが姫殿下は肉球占いに夢中になっておられた。
「王様、姫様、外人力士、王様、姫様…………」
(待っていてはだめだ。はっきりとおれの意思をお伝えしなくては……)
おれは右手を動かそうとした。
しかし姫殿下が思いの外がっちりとホールドされているので動かせない。
だからといって乱暴に振り払うわけにもいかない。
そこで空いた左手で床を光速タップすることにした。
体重が乗っている左手を屈して上体を沈めてから思いきり跳ねる!
「ああっ、ぽこたんは姫様だ! あはは」
姫殿下が急に右手を引っ張られたのでおれはバランスを崩し、顔面で着地してしまった。
(おっぱァアアーっ)
おれは痛みにのたうち回った。
「あっ! この動きは何を意味しているんですか?」
姫殿下が上杉さんにお尋ねになった。
「甘えてるんじゃない?」
勝手に裁判の原告にされてしまった動物たちの気持ちが少しわかったような気がした。
727水先案名無い人:04/11/22 15:34:00 ID:AJZ6WApo
「ぽこたん、ちょっとだけ外に出てみないか?」
姫殿下のご提案におれは身をすくめた。
この着ぐるみを着て長時間活動するのは体力的に不可能。
それに過去を振り返ると、「出てみないか」と言われて出たものは、登校拒否の自助グループ、
仏教系の勉強会、居酒屋の外(ホモの先輩と)などろくなものがなかった。
そんなことを考えながらもじもじしていると、姫殿下が沈んだ声でおっしゃった。
「そうか、だめか……せっかくみんなに自慢したり、馬乗りになろうと思ったのに……」
(姫殿下がクマ乗り!? いや馬乗り!?)
「クマ――!!」
おれは廊下に踊り出た。

「ちょっとだけ、この階を回るだけだから」
姫殿下はおれが逃げ出さないよう何とか引きとめようとしておられた。
おれはそろそろ汗も出なくなり、体力の限界に近づいていた。
(そろそろ演劇部室に戻ることをかわいらしくおねだりしてみないと……)
おれがクマである自分の魅力を最大限に引き出すポーズを考えていると、突然姫殿下が歩みを止められた。
(ん、何だ? ………………ああっ!)
目の前に足の不自由な生徒用のエレベーターがあった。
(ま、まさか……)
「ぽこたーん、これならぽこたんでも下に下りられるな。階段は怖いだろう?」
そうおっしゃりながら姫殿下は「下」のボタンを押された。
(いや、ちがうんです! 階段との比較の問題ではなくて!)
すぐにエレベーターの扉が開いて、おれはむりやり押し込まれた。
中は狭く、機械音がとても大きく感じられた。
(きっとスペース・ビーグル号のエレベーターに乗ったクァールもこんな恐怖を味わったんだろうなあ)
身をすくめたおれの首元を姫殿下が優しく撫でてくださった。
「もうすぐ外の風に当たれるからな。もう少しの辛抱だぞ、ぽこたん」
(外に出るのか……)
ホント クマの中は地獄だぜ! フゥハハハーハァー、と思った。
728水先案名無い人:04/11/22 15:35:32 ID:AJZ6WApo
歴戦の勇者にふりかかる最大の試練。
毎回手に汗しつつ拝読しております。
がんばれぽこたん!(・∀・)!
729水先案名無い人:04/11/22 15:37:02 ID:AJZ6WApo
          , -''''~"''''-,,,,,_
         /__┐     <:、
       /::/ ,ィ ̄"''-.へ/,rヽ     ←姫様
.       /::// /,∠{. } ト、ヽ"ヽ.ヽ    ↓藤村
     /::イレ ,イ7ニ{i |l十ト、ヽ ヽヽ 
     /::::i {/ 代:ケ.ヤ }ハノ.ヤ、',ヽ',ヽ   _
    /:::::::l  ! ~"'' ,ヤ 'i::ケ、}/__l_l,!,,,,rノノ >、_ヽヽ
   /::/::..::|  l、   r- 、 ~"'/     ヽニ‐-、ヽ) )
  ノ::/::.::::,r-:、|:ヽ Lノ  ,イ       ヽ.  } iノ
/:::/.:::/"  ヽ. >、_,,. ィ"●    ●   ヽク
:::/:://     ヽ、/:::::/ :/▼ ヽ.      i  クマー
/::{:/∧  へ    ヽ.::{、 '、人 ノ     ,/\ 
::::://::::',   ヽ.    ヽ \ ,.-ェ''_,, o,,,,;;;;;;;o  :、
../ l::::::::::::::...... ::\    \ノ   --='/::Д:::::::::::::::ヽ.
730水先案名無い人:04/11/22 15:38:34 ID:AJZ6WApo
誰だよそれ。
731水先案名無い人:04/11/22 15:40:04 ID:AJZ6WApo
なにこのスレ…
っていうかこの書きまくってる人の小説めちゃくちゃ長いな
2ch史上最長じゃないか?
732水先案名無い人:04/11/22 15:41:35 ID:AJZ6WApo
建物から一歩外に出ると確実に体感温度が上昇した。
「クマでーす!」
おれの目の前で姫殿下が叫ばれた。
すると歩いていた何人かの生徒が足を止めてこちらに向かってきた。
「あの、これ……クマ?」
「クマです!」
姫殿下は自信たっぷりにお答えになった。
「触ってもいい?」
「クマですから触ってください!」
こうおっしゃったので生徒たちは恐る恐るおれの毛皮に手を触れた。
「クマ……ふわふわ」
最初のうちは遠慮がちに撫でていた生徒たちも次第にハードペッティングへと移行していった。
(うぅ……何でおれがこんな特殊なプレイをしなきゃならないんだ……)
1人の生徒が喉もとをくすぐり始めたのでおれは顔を上げた。
すると列になってランニングをする運動部員の姿が見えた。
運動部員たちはおれの姿を認めると足を緩め、やがて立ち止まり何やら相談し始めた。
見ていると代表らしき生徒がこちらに歩いてきた。
(あ、あれはソフトボール部の病院坂ククリさん!)
「マコさん……」ククリさんが小さな声で姫殿下に申し上げた。
「あの……このクマは……?」
「わたしのクマです!」
姫殿下はきっぱりとおっしゃった。
「そう……ちょっと触ってみてもいい?」
「わたしのクマですからどうぞ!」
姫殿下のお許しを頂戴したククリさんはおずおずと手を伸ばした。
「クマかあ……」
「クマです!」
「クマ……」
「よかったらソフトボール部の皆さんもどうぞ!」
うれしいことおっしゃってくれるじゃないの、とおれは吐き捨てるように呟いた。
733水先案名無い人
おれは数十人の生徒に入れ代わり立ち代わりまさぐられ続けた。
その間にも人数はどんどん増えていった。
「部長! クマです!」
またマドハンドの仲間を呼ぶ声が聞こえた。
(今の声……どこかで聞いたことが……)
「はい、ごめんよ〜、ごめんよ〜」
群がる生徒たちを掻き分けて下川さんが姿を現した。
(ま、まずい…………)
「ほら、本当にいたでしょ、クマ」
下川さんの後ろから小柄な平沢さんがぴょんと踊り出た。
さらには美術部の他の3人もいる。
「へえ、クマか……」
残忍な笑みを浮かべた下川さんが音もなくおれに近づき、誰にも見えない角度からおれの脇腹に膝蹴りを入れた。
(ぐはっ!)
おれは痛みにのたうち回った。
「あっ、甘えてる!」
姫殿下が叫ばれた。
「マコちゃん、この中に入ってるのは誰?」
松川さんがお尋ね申し上げた。
「藤村です」
「へえ、どうりで姿が見えないと思った」
「ごめん……まさか藤村さんがそんなみじめで暗くてさびしいクマの中にいるとは思わなかったから……
あたし浮かれちゃって……」
下川さんが手で口を覆うようにして言った。
(嘘だ! 絶対嘘だ!)
「藤村さん、クマ系ですね……」
キャノンさんがぽつりと呟いた。
(系をつけるな! 専門用語だ!)
おれはもう限界だと思った。