305 :
海皇紀(川原正敏):
ソルはそれから2年後に死んだ。
あの王海走から4年たった今じゃ思い出す回数もずいぶんと減った。
みんなとはロナルディアと和平交渉してからはなかなか会えていない。
最後に会ったのはもう1年も前か。
トゥバンのおっさんは剣の腕を買われてウォルハンに
客分待遇で入国した。大陸一どころか天下無双の兵法者だ。
早くもバケモノとか呼ばれてついてくる弟子がいないらしい。
ニッカは俺の隣で副官やってる。立ててる将来設計があるそうだ。
フォレストは戦争終結後パパになっちまってオメデトウというか
なんというか‥‥まあいいさ。
マイアはオンタナで祖国復興活動中だ。
今でも俺と伝書鷹で文通中、遠距離恋愛というやつだ。
五通に四通は嫌味を返してくれる困ったお姫さんだ。
メルダーザはグリハラの農場を継いだらしい。
カザルは別の大陸でまた戦争を始めてる。ありゃ当分独身だ。
アル・レニオスはガルハザンの王都ルグーンで軍師育成をやっている。
少女好きのくせに生意気だが実力は買ってるんでぜひ一旗揚げてほしい。
ヴェダイは海都の牢屋ん中だ。
まあ俺の子分ならそう珍しいことでもねえ‥‥のか?
ギルゴマは水門のキャプスタンころがしてる。
“アイスダガァ”は海皇代理になって時々ソル海皇時代の思い出を
無表情で語ってくれるありがたくないヤツだ。
それともう一人ディアブラス‥‥‥は知らねえ。
そして俺は今‥‥
いろいろあって海皇兼影船の船長やってる。
海都からまた俺の帰還を訴える書状が来た。
俺に言いたい事はわかるがちょっとばかり鬱陶しい。
俺はあれから王海走はやっていない。
‥‥でもよ、ソル。俺は常々思うんだ‥‥
とうぶん仕事怠けてえなぁ‥‥