他言無用だ。お前だけに話す。
俺の父は俺が幼い頃に愛人を作った。
その女に子供ができたことを知った母は、黙って身を引いた。
そして半年後に父を想って死んだ。
俺は…父を憎んだ。
身を引いた母の愛が理解できなかった。
その上、若い頃に怪我をしてテニスができなくなった。
父を憎み、我が身を呪い、母の死に顔が頭を離れず
いっそ死んだ方が、どれほど楽かと…
その生き地獄から岡が救ってくれた。
俺だから育てられる。 俺にしか育てられない。
そう確信した時、自分の過去の一切が肯定できた。
悩みも苦しみも痛みも、すべてが岡を育てるのに必要なものだと思えるようになった。
そして求めずして、父を愛した母の一生も分かった。
なぜなら、俺自身がいつしか同じように岡を愛していたから。
2 :
水先案名無い人:04/03/14 16:26 ID:dB76WIG6
終了
愛している 愛している 愛している
これほど愛せる相手に巡り合えるとは思わなかった。
生きてきて良かった。
藤堂…俺はもう長くない。
俺には寿命がない。
分かっていたのだ、お前たちに会う前から。
よく今日まで持った。
こんなに持つとは思わなかった。
どの人生も終わるさ。
夢のようだ。
だが、この人生が人の80年に劣るとは思えない。
藤堂、岡を頼む
頼む
1月15日
岡、今日いよいよお前は渡米する。俺は今静かな気持ちで、お前のことを思い出している。
初めてお前のプレイを見た時、何て下手くそなんだと思った。
しかし、何度も食らいついてくる根性とパワーが、俺の目を引いた。
お前は、限界を知らない。どこまでもやれる。
テニス生命を絶たれた自分の代わりに、お前を育てたい、そう思った。
「私のテニスを教えて下さい!」お前にそう言われた時は、本当に嬉しかった。
いつの間にかお前は、俺の代わりではなくなっていた。お前を伸ばす為なら、何でもできると俺は思った。
岡、俺は今幸せだ。一片の恨みもない、一片の悔いもない。やっと自由になった。
ただ一つ気がかりなのは、俺がいなくなった後のことだ。お前は悲しむだろう、泣くだろう。
だが、俺はお前を信じている。お前は這い上がれる。かならず立ち上がれる。
忘れるな、岡。どん底から這い上がった人間こそ、強いのだと。強くなれ、岡。誰よりも強くなれ。
俺はいつでもお前と共にいる。お前と出逢えて嬉しかった。
岡、エースをねらえ!