メロスは激怒した

このエントリーをはてなブックマークに追加
686水先案名無い人
「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と

そこには元気に走り回るメロスの姿が!

かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、
齧(かじ)りついた。
群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。

実はメロス以外全員仕掛け人 !

「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。
私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若(も)し私を殴ってくれなかったら、
私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」

と、次の瞬間!

セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯(うなず)き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。
殴ってから優しく微笑(ほほえ)み、
「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。
生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
それにしてもこのセリヌンティウス、ノリノリである
687水先案名無い人:2007/04/12(木) 01:50:00 ID:sQybTK2+0
メロスは腕に唸(うな)りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
群衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞えた。

「殴り合いを始めたときは、もう駄目かと思いました。あの時、間に割って入った王様には本当に感謝してます」

暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、
まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶(かな)ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。
どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」

と、ここでネタばらし

ひとりの少女が、緋(ひ)のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、
メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

分からなかった方のために、もう一度。
「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。」

勇者は、ひどく赤面し、あえなく御用となった