「諸君 私は〜が好きだ」を貼って　＜７＞

「もっとも恐るべき扇動政治家とは何か　わかるかねインテグラ」
「・・・・・・・ヨブ・トリューニヒト」
「そうだその通りだよ　我らが宿敵ヨブ・トリューニヒトだよインテグラ
　ではなぜトリューニヒトはそれほどまでに恐ろしい？
　トリューニヒトは弱点だらけだ
　ヤン・ウェンリーを嫌い　帝国軍を嫌い　ビュコック提督やアイランズの正論は身を焼く
　ヤン提督追悼式典を出席できず　同盟憲章に目をそむけ　カイザーに目をそむかれ
　ほとんどの憂国騎士団員は夜しか動けず　安息のねぐらは唯一ツ暗く小さな議長公邸だけ
　それでもトリューニヒトは無敵の怪物と呼ばれる
　インテグラ　何故だかわかるかな」
「・・・・・・・憂国騎士団や国防委員会を操る事？」
「それは決定的ではない」
「ロイエンタールに銃を撃たれないと死なない事？」
「少々役不足だ　倒す法はそれに限らん」
「中身の無い美辞麗句を並べた演説で　いくらでも支持者と下僕を増やす？」
「それは確かに恐るべきことだ　だが無敵か、とは少し違う
　もっともっともっともっと単純なことだ」
「・・・・・・・恥知らず？」
「そうだ　トリューニヒトはとっても厚顔無恥なのだよ　インテグラ
　無神経　先見力　第六感　容姿端麗　演説能力
　権力欲　集金能力　政治的変身能力　不死性　ｅｔｃ　ｅｔｃ
　しかし最も恐るべきはその純粋な暴力・・・『無恥』だ
　自由惑星同盟を軽々とぼろ雑巾の様に引きちぎる
　そしてたちの悪いことにトリューニヒトはその力を自覚している
　単一能としてでなく　彼の理知を持って力を行使する『扇動政治家』だ
　トリューニヒトとの政治闘争は死を意味する
　いいかねインテグラ　トリューニヒトとは知性ある
　国家を枯死させる『宿木』なのだ　これを最悪といわず何をいうのか」