映像の世紀のガイドライン

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886水先案名無い人
「部屋はありませんか?」
「部屋はありませんか?」
全財産を手押し車に乗せ、あるいは背負った人々が、一軒一軒回って同じ質問を繰り返す。
狭くて曲がりくねった通りに溢れかえるユダヤ人が、今日も精気の抜けた青白い顔で
押し合い圧し合いしながら、ざわざわと流れていく。
街のあらゆる地区から現れ、それがひとつの大きな河となり、
通りをぞろぞろと際限もなく流れてゆくのがここでのたしなみ。
もちろん、世界はこれまでこのような状況を見たことがあろうはずもない。

ワルシャワ・ゲットー。
1940年に指定されたこの地区は、ユダヤ人隔離のために選ばれたという、
ワルシャワでもいちばん荒廃した地域である。
ナチス・ドイツの占領下、文字通り骸骨のような姿をした人間が充満しているこの地区で、神に見捨てられ、
中には数週間地面に放り出された、死体そっくりの顔をした人もいる。
無残なその顔を見ると思わずぞっとする。
ユダヤ人への迫害がエスカレートし、絶滅収容所へ送られるときでさえ、
ナチに無意味な存在だと言われ続ければ洗脳されたユダヤ人が家畜用貨車で出荷される、
という仕組みが未だ記録に残っている負の歴史である。