映像の世紀のガイドライン

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66水先案名無い人
時代の流れは確実に変わりつつあった。
明るさ・華やかさ・生命力。
そんなさまざまな要素が混じり合いながらそこかしこに溢れ出し
一つの空気を作り上げはじめていた。

この時代ではっきり覚えていることがある。

私はタクシーに乗っていた。
車はちょうど藤色と薔薇色に染まった夕空の下、
ビルの谷間を滑るように進んでいる。
私は言葉にならぬ声で叫び始めていた。

そうだ、私にはわかっていたのだ。

自分は望むものすべてを手に入れてしまった人間であり、
もうこの先、これ以上幸せにはなれっこないのだということを。

                作家 S・フィッツジェラルド
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                 マイ・ロスト・シティーより