「どうしたRX」
採石場でみみずの這ったような特訓を続けていた1号が、ZXのマイクロチェーンを持った手をとめて言う。
RX…そう、仮面ライダーBLACKRXだ。十一人目のライダーで、初めて多段変身や車のサポートメカ、武器でトドメを遂げたライダーだ。
「ふふ、ふふふ。あは、あははははははは…」
くすくす笑いが、本当の笑いになり、RXは、首から上を空に向けたまま、愉快そうに笑い続けた。
他のライダーが薄気味悪そうに彼を見つめた。
「おい、なんだあれは?RXどうしたんだ」
「気持ち悪い…」
RXの笑い声に混じって、ライダー達がひそひそと声を交わす。
そのとき、RXが両手でおもいきりバーンと崖を叩いた。
一斉にシーンとなる採石場。
目を丸くして見つめるライダー達の視線のなかで、彼はドス低い声でひとこと、「ぶっちぎるぜぇ」と言った。
一拍おいて、採石場はどっと爆笑の渦につつまれた。
「キャハハハハハハ!やだRX、それ、すっごいおもしろいよー!」
「ワハハハハハ、なんだよ、RXのやつ!たまってんじゃねーの?」
1号が必死に制するのも聞かず、ライダー達の弾けるような笑い声が採石場を突き抜けて響きわたった。
「うふ、うふふ。ちょうだい、ねぇ、ちょうだいよ。信じられない事、頂戴。俺はもう我慢できない。ねぇ、いいでしょ?
ほしいんだ。奇跡が。きせき!きせきがほしい!
いれさせて、ねぇ、いれさせてくれ!リボルケイン、ぐしゃぐしゃになったかいじんのどてっぱらに、あつくてふとくてながくてかたいリボルケインいれさせてよー!
したい、したい、したい!したいんだぁぁぁ!しんじられないことをおこしたいんだよおぉぉ!!
ぶっちぎるぜぇぶっちぎるぜぇぶっちぎるぜぇぶっちぎるぜぇぶっちぎるぜぇぶっちぎるぶっちぎるぶっちぎるぶっちぎるぶっちぎるぶっちぎるぶっちぎるぶっちぎるぶっちぎるぶっちぎるぶっちぎる…」
ライダーたちの笑い声が、徐々にたち消えていく。
RXは、まるで壊れたCDプレイヤーのように「ぶっちぎる」という単語を連発し続けていた。
笑っているライダーは、もう一人もいなかった。
今や誰の目にも、RXが尋常でないのは明らかだった。
ここはじっくり作戦を練ろうじゃないか。