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116水先案名無い人
「どうしたの太田さん」
美輝に向かって鶴嘴千本のような串を投げつづけていためぐみが、串を持った手をとめて言う。
太田…そう、太田さんだ。八百黒の店員で、いつも何人かの女の子に振り回されてる男だ。
「ふふ、ふふふ。あは、あははははははは…」
くすくす笑いが、本当の笑いになり、太田さんは、首から上を店の外に向けたまま、愉快そうに笑い続けた。
通行人達が薄気味悪そうに彼を見つめた。
「ちょっと、なにあれ?あきちゃんどうしちゃったの」
「気持ち悪い…」
太田さんの笑い声に混じって、町の人達がひそひそと声を交わす。

そのとき、太田さんが両手でおもいきりバーンと机を叩いた。
一斉にシーンとなる通り。
目を丸くして見つめる町の人達の視線のなかで、彼は低い声でひとこと、「ブシレンジャー」と言った。

一拍おいて、通りはどっと爆笑の渦につつまれた。

「キャハハハハハハ!やだ太田さん、それ、すっごいおもしろいよー!」
「ワハハハハハ、なんだよ、太田のやつ!たまってんじゃねーの?」
真紀子が必死に制するのも聞かず、町の人達の弾けるような笑い声が通りを突き抜けて響きわたった。

「ふふ、ふふふ。やりてえよ、なぁ、やりてえよ。ブシレンジャーごっこ、やりてえ。俺もう我慢できないんだ。なぁ、いいだろう?
やりたいんだよ。ブシレンジャーごっこが。ブシレンジャー!ブシレンジャーごっこがしたいんだ!
やろう、なぁ、やろうよぉ!熱い、正義のブシレンジャーの勇姿、ブシレンジャーごっこー!
したい、したい、したいんだ!したいんだぁぁぁ!ブシレンジャーごっこがしたいんだぁぁ!!
ブシレンジャーブシレンジャーブシれんじゃーぶしれんじゃあぶしれんじゃあぶしれんじゃあぶしれんじゃあぶしれんじゃあ…」

町の人の笑い声が、徐々にたち消えていく。
太田さんは、まるで壊れたCDプレイヤーのように「ブシレンジャー」という単語を連発し続けていた。
笑っている町の人は、もう一人もいなかった。
今や誰の目にも、太田さんが普段通りだったのは明らかだった。