さわやかな朝の挨拶のガイドライン 第三章

このエントリーをはてなブックマークに追加
612水先案名無い人
「ハズレ無しの、のあのあくじいかがですかー!」
「1回500円、当たるかもしれない、当たらないかもしれない、多分当たらない…」
売り子の声が、日本武道館の敷地にこだまする。
ミサワ様のお庭に集うノアヲタたちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、田安門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、ノア選手のTシャツ。
ヤキソバの匂いに心を乱さないように、ダフ屋の声に耳を貸さないように、
ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、試合開始ギリギリで走ってくるなどといった、はしたないファンなど存在していようはずもない。

プロレスリングNOAH。
2000年創立のこの団体は、もとは華族の令嬢のためにつくられたという、
伝統あるカトリック系お嬢さまプロレス団体である。
東京都下。『聖地』の異名を未だに残している観戦しやすいこの会場で、
神に見守られ、ジュニアからヘビーまでの一貫プロレス教育が受けられる乙女の園。
時代は移り変わり、元号が昭和から平成に改まった今日、
数回通い続ければ温室育ちの純粋培養ノアヲタが箱入りで出荷される、
という仕組みが未だ残っている貴重な団体である。