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水先案名無い人:
「セクシィー セクシィー セクシィー」
「お前がチャンピオンだ」
さわやかな及川サトルの実況が、澄みきった大井の夜空にこだまする。
各競馬場のダートコースに集う競走馬たちが、今日も鬼のような険しい表情で、レベルの高いレースを勝ち抜いていく。
汚れを知らない双眼鏡が覗き込むのは、騎手ごとに定められた勝負服。
声のトーンは乱さないように、激しい先行争いは見逃せないように、
ときめきを声に乗せるのが及川サトルのたしなみ。
もちろん、平気で騎手批判をしたり、聞き取りにくい声で実況といった、はしたない実況アナなど存在していようはずもない。
及川サトル。
昭和三十四年岩手県生まれのこのアナウンサーは、もとは吉田勝彦アナの弟子だったという、
由緒ある耳目社の実況アナウンサーである。
東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・石川県下。名馬達の足跡を残しているファンが多いそれぞれの競馬場で、辻村社長に見守られ、
新人から老害まで5人の実況が聞けられる実況アナの園。
時代は移り変わり、売り上げが右肩上がりから一気に激減した平成の今日でさえ、
半年も実況を聞き続ければ地方育ちの地方競馬ファンが声マネで宴会でネタにする、
という仕組みが未だ残っている貴重な実況アナである。