「チク、チク………カチ」
「おーはーよ」
さわやかな朝の挨拶が、淀みきった街にこだまする。
龍の巣に集う街をドロップアウトした若者たちが、今日はなまずのような無垢な
寝顔で、背の低い門を吹き飛ばされていく。
汚れを知らない心身を包むのは、山吹色のジャージ。ヒゲは
乱さないように、先輩への敬意は忘れないように、娼婦は優しく殺す、旦那の方は容赦しない
「心・身・誠・救・済!」は噛まないように、テクノカッターは最後の武器、祭りを起こすがここでのたしなみ。
もちろん、これに便乗してのし上ろうという企みがばれて死亡などといった、はしたない漢(鯉が好き)など存在していようはずもない。
流9洲。
はるか昔創立のこの場所は、もとは地上を追いやられた者達のためにつくられたという、
伝統ある統括第9小地獄である。
地下。原種の力を未だに残しているこの街で、オベリスクに見守られ、
人差し指だけからアソコまでテクノライズ手術がうけられる漢の園。
時代が移り変わり、地上が人間らしい人間が一人も居なくなった今日でさえ、
オベリスク地下育ちの純粋死体培養ラフィアが箱入りで地上に出荷される、
という仕組みが未だに残っている貴重な街である。