「全軍突撃、ガンパレード」
「最後の一人までことごとく敵と戦って死ね」
さわやかな朝の命令が、淀みきった雲り空にこだまする。
火の国のお庭に集う戦車兵たちが、今日も天使のような無垢な
笑顔で、幻獣の炎に包まれていく。
汚れを知らない心身を包むのは、人型戦車「士魂号」。遮蔽物の無い戦場では
立ち止まらないように、攻撃するときは「狙い」をつけて外さないように、幻獣を一撃で仕留めるのがここでのたしなみ。
もちろん、大破した機体から降車し肉体のみで戦うといった、はしたない絢爛舞踏など存在していようはずもない。
第5121独立駆逐戦車小隊。
1999年3月新たに設立されたこの小隊は、もとは軍隊の爪弾きのためにつくられたという、
寄せ集めの落ちこぼれ集団である。
熊本市下。尚敬女子高内に間借りしているプレハブ校舎で、猫神に見守られ、
幼稚園児からソックスハンターから芝村まで速成軍隊教育がうけられる変態の園。
季節が移り変わり、自然休戦期が迫った四月下旬の今日でさえ、
二週間もしないうちに温室育ちの戦車兵が棺おけ入りで出荷される、
という仕組みが未だに残っている危険な小隊である。