さわやかな朝の挨拶のガイドライン

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306水先案名無い人
「さようなら、比良坂さん」
「ではね、ごきげんよう」
さわやかな別れの挨拶が、澄みきった夕焼け空にこだまする。
蜘蛛神様の狩猟場に集う清童と生娘たちが、今日も天使のような無垢な
笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を狙うのは、黒に身を包んだ女性。場違いな黒い制服は
闇に溶け込むように、蜘蛛と化して餌を食らう時は結界を張るように、注意深く振舞うのがここでのたしなみ。
もちろん、銀に操られて破魔矢で初音を狙うなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。

県立八重坂高校。
山のふもとのこの学校は、もとはごく一般的な学徒のためにつくられたという、
伝統ある公立系共学高校である。
某県下。いにしえの面影を未だに残している緑の多いこの地区で、蜘蛛神に見守られ、
豚から贄までの餌がうろつく若人の園。
時代が移り変わり、建物が木の温もりから石の冷たさに改まった平成の今日でさえ、
数日通い続ければ温室育ちの純粋培養生娘や清童が箱入りで捕食される、
という仕組みが未だに残っている貴重な学園である。