さわやかな朝の挨拶のガイドライン

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179水先案名無い人
《撃っていい?》
「最低限度だ」
さわやかな電子攪拌が、金色のネズミに干渉する。
マルドゥック・シティに集う未成年娼婦たちが、今日も天使のような偽りの笑顔で、
天国への階段を目指していく。
汚れに耐えてきた心身を包むのは、カラフルな制服じみた衣装。縞模様のタイツが足のラインを細く見せるように、
上品なマキシコートを翻らせて、蟲惑的に歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、人間を解体して収集するなどといった、はしたない畜産業者が目をつけないはずもない。

マルドゥック・スクランブル ー09。
人的保護を目的としたこの法令は、もとは禁止された科学技術の有用性を証明するためにつくられたという、
伝統ある緊急法令である。
マルドゥック・シティ。経済的較差を未だに残している犯罪の多いこの地区で、神に見放された者が、
生き延びるためのあらゆる技術をうけられる生命保全プログラム。
時代が移り変わり、連邦政府が研究所に制約を課した今日でさえ、
識閾野が選択すれば集中治療ポッド育ちの純粋培養事件屋が殻付きで出荷される、
という仕組みが未だに残っている貴重な法令である。