餓羅覇道(がらはどう)
中国は元の時代、狼磨沙牙(ろうまさが)という古代から伝わる必殺拳法があった。
狼の牙をまねた動きをするその拳は代々一子相伝で伝えることになっていたが、
子がすべてできが良かったため、師匠は誰に継がせるか悩んでいた。
ある日のこと、師匠は一通りの修行を終えた彼ら一人一人に
「あとは最強の奥義、哀守送土(あいすそうど)を教えれば免許皆伝だが、
一子相伝のため一人にしか教えることができない。
おまえは、その殺人拳をほしいか?」という問いかけをした。
一人目は、「関係ありません、私は今のままで十分です」と答えた。
師匠は彼の才能を見込んでいたが、それならば仕方ないとあきらめた。
二人目は、「教えてください!頼みます!」と懇願した。
しかし、裏にやましさを感じた師匠は教えるのを拒否した。
三人目は、「教えていただかなければ、殺してまでも奪い取る!」と、師匠を殺してしまった。
そしてすべてを手に入れた彼は力で中国に君臨しようとしたのである。
まるで餓えた獣や戦神阿修羅のようにすべてを奪っていくありさまを
人々は「餓羅覇道(がらはどう)」と呼び、おそれ、それを打ち倒す救世主を求めた。
その願いがあってか、しばらくのち四人目の弟子が師匠の敵討ちのため彼と戦い、
ついには彼を打ち倒したという。
なお、「憎まれっ子世に憚る」ということわざはここから生まれたことも記しておく。
現在、あるゲームでガラハドという人物からアイスソードをもらうイベントで
似たような選択肢を選べるが、それはこの話が元になっていることは言うまでもない。
またこの話に良く似た漫画が大ヒットし、アニメや映画となって世に出たことがあるが
現代風にアレンジした「餓羅覇道」の逸話だったという事を知る人は少ない。
民明書房刊「You は Shock!あなたの知らない盗作作品たち!」より抜粋