民明書房刊 DNAに刻まれた中國のガイドライン

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202水先案名無い人
温堂流流裸魏旦泥酢香(おんどうるるらぎたんでいすか)

正しくは、「おんどうりゅう るらぎたん でいすか」。

宋代、都には温堂老師という武術の達人がいた。
老師が開いた温堂流武術とは、相手の不意を突いて渾身の一撃を以って相手を制すのが特徴であり、
武器を持った敵にも有効なところから、主に徒手空拳の貧民の間で瞬く間に広まった。
温堂老師の弟子に魏旦という実力者がいたが、彼の自らの実力を誇る態度を見かねた老師は、
ある雪の夜、魏旦を裸にして道場から放り出した。
信頼していた老師から裏切られたと思った魏旦は、高楼から見ていた老師に罵声を浴びせたという。
その後、流浪の身となった魏旦は文字通りに裸一貫で自らを鍛え直し、
遂には民衆から「流裸魏旦」と畏怖と敬意を込めて呼ばれるまでの腕前になった。
そしてかつての師の真意を知った魏旦は、温堂老師に対戦を申し入れ、
戦いが始まるやいなやすぐさま老師めがけて隠していた泥玉を投げつけた。
よくある不意の突き方と考えた老師は慌てることなくそれを受け止め握り潰したが、
それは罠でその途端、泥玉の中に仕込んでいた酢の臭いに老師は顔をしかめ、
その時出来た隙を突いて、魏旦の当て身を受けてしまった。
魏旦が遂に自分を超えたことを知った老師は、魏旦を温堂流の後継者に指名したという。

この様に相手の予想の裏をかく戦術は温堂流では奥義「泥酢香」として伝えられたが、
未熟な使い手の間では真の意味は忘れられて
「温堂流流裸魏旦泥酢香」の掛け声とともに攻撃することが流行し、
しまいには、貧民同士の喧嘩で掛け声代わりに使われるようになってしまったという。

現在放送中の仮面ライダー剣において「オンドゥルルラギッタンディスカー!!」と主人公が叫ぶシーンがあるが、
掛け声や主人公を見下ろす人物の存在から、この史実を踏まえたものに間違いない。
今後、主人公の戦いが温堂流の華麗な技を見せるか、
それとも与太者の喧嘩に終わるか、目が離せない。

民明書房刊『中華武術と特撮』より抜粋