共産主義になった翌日のガイドライン

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543水先案名無い人
西武株が上場廃止になった翌日、私は妻とともにプリンスホテルに出かけた。  
優勝セールだというのに店内は閑散としている。  
店員の表情は絶望と不安に満ち、通路にこぼれた水滴が蛍光灯の光を反射していた。  

「株主の声に一喜一憂する時代は終わったのだな」  
昨日までコクドに勤めていた斎藤さんが、ほっとしたように私たち夫婦に言った。  
「ええ、これからは自分たちの利益だけを追求できるんですよ」  
普段は滅多に話に加わらない妻の靖子が、斎藤さんの肩に手を置いて優しく言った。  
「ライオンズを御覧なさい。パリーグで2位なのに日本一なんてインチキ球団じゃないですか」  
通りがかりの髪の長いホークスファンが吐き捨てるように言った。  

堤会長はライオンズを質に入れ、騙した会社から西武株を買い戻した。  
「他の株主などもう不要だ。グループは私のものだ、私のものだ、グゥーワッハッハッハ…」  
狂った独裁者の表情で男は言った。  

青空のなかをを松坂夫妻が横切っていった。