民主政権になった翌日、私は妻とともに散歩に出かけた。
もう冬だというのに木は青々としている。人々の表情は希望と活気に満ち、
額から流れる労働者の汗が太陽光を反射していた。
「国籍で差別される時代は終わったのだな」
昨日まで入管に足止めされていた朴某さんが、ほっとしたように私たち夫婦に言った。
「ええ、これからは外国人でも日本人と同じ権利、いやそれ以上の道徳的優位性を
持てる時代なんですよ」
普段は滅多に話に加わらない妻が、朴某さんの肩に手を置いて優しく言った。
「管総理、岡田先生、トミ子先生を御覧なさい。皆、我々在日への謝罪と
賠償の必要性を認識しているじゃないですか」
通りがかりのエラの尖った中年男がそう言って微笑んだ。 昨年より在日朝鮮人の
服役囚の無条件釈放も管政権は積極的に取り組んでくれている。
「そもそも裁判自体が日本人が裁判官をやる以上不公平でしたからね〜」
先日釈放された宅間氏もにこやかに微笑みかける。
全国の裁判所に朝鮮人専門の、朝鮮人裁判官が設置されたばかりだ、朝鮮人同士の
犯罪以外では根本に差別問題があるとの理由で、画期的な判決が次々と下っている。
「そう、われわれはもう自由なのだ」
従業員全員に民主党への投票を約束させている、風俗店オーナーが胸をはる。
「次回の選挙の際には、民主に投票したら半額ってイベントをやるよ!!」
アイディアはとどまるところをしらない。
参政権を持たない我々が、日本人のふりをしてまでインターネットで自民党の
ネガティブキャンペーンを繰り広げたのは、今日のような日が来ると信じていたからだ。
不法滞在者は長年使ってきた偽造旅券を質に入れ、銀行へ無担保の融資を
要請するための長蛇の列に加わる。
「戦後に渡って来た同胞の様に、われわれも日本から正当な賠償が与えられる、
彼らは駅前の土地をもらったがわれわれは現金だ。資金はいくらでもある、
これからは日本中に朝鮮文化に染め上げよう」
男は鎌倉に風俗ビルを建てる予定だ、既に同胞が京都と奈良で実現させている事業だ。
「やることはいくらでもあるよ、日本はこれから良い国になるな」
青空のなかををツバメが横切っていった。