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水先案名無い人:
会社の敵が襲ってきた翌日、私はイオナズン使いとともに散歩に出かけた。
もう冬だというのに木は青々としている。
人々の表情は希望と活気に満ち、額から流れるOLの汗が太陽光を反射していた。
「これからの時代はイオナズンだな」
昨日まで営業二課に勤めていた斎藤さんが、ほっとしたように私たちに言った。
「ええ、これからは魔法で会社を守る時代なんですよ」
普段は滅多に話に加わらないイオナズン使いの安田が、斎藤さんの肩に手を置いて優しく言った。
「イオナズンの威力を御覧なさい。敵全員に100以上与えるじゃないですか」
通りがかりの経理課の中年社員がそう言って微笑んだ。
守衛は長年使ってきた警棒を質に入れ、黒光りする杖を購入した。
「警棒はもう不要だ。これからは会社中に魔法の呪文を響かせよう」
一冒険終えた魔法使いの表情で男は言った。
青空のなかををツバメが横切っていった。