共産主義になった翌日のガイドライン

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108水先案名無い人
又吉イエスが首相になった翌日、私は妻とともに散歩に出かけた。
もう冬だというのに地獄の火は赤々としている。
人々の表情は希望と活気に満ち、世界経済共同体党員の汗が太陽光を反射していた。

「無茶苦茶で、どうしようもない、悲惨な世界は終わったのだな」
昨日までとある一流企業に勤めていた斎藤さんが、ほっとしたように私たち夫婦に言った。
「ええ、これからは唯一神が日本を治め給う時代なんですよ」
普段は滅多に話に加わらない妻の靖子が、斎藤さんの肩に手を置いて優しく言った。
「悪人たちを御覧なさい。又吉イエス様が火の中に投げ込んでるじゃないですか」
通りがかりの髪の長い中年男がそう言って微笑んだ。

ロックンローラーは長年使ってきたギターを質に入れ、黒光りする聖書を購入した。
「ロックはもう不要だ。これからは世界中に又吉イエス様の福音を響かせよう」
一説法終えた宣教師の表情で男は言った。

青空のなかで対立候補が腹切って逝った。