夏目漱石「坊ちゃん」のガイドライン

このエントリーをはてなブックマークに追加
188水先案名無い人
何の気もなく教場へ入ると、黒板いっぱい位な大きな字で、【ムーミンママ】と書いてある。
私の顔を見てみんなわぁと笑った。私は馬鹿々々しいから、「トロール族ではおかしいか」と聞いた。
すると生徒の一人が、「然し裸エプロンは過ぎるぞな、もし」と言った。裸エプロンだろうが葉っぱ一枚だろうが、
私の銭で私が服を買うのに文句があるもんかと、さっさと講義を済ましてキッチンに帰ってきた。
十分経って次の教場にでると【一つ裸エプロン也。但し笑う可からず】と黒板に書いてある。
さっきは別に腹も立たなかったが今度は癪に障った。冗談も度を越せばいたづらだ。
ミィのおせっかい(反対語は、スナフキンの粋なはからい)のようなもので、誰も誉め手はない。
田舎者は此呼吸が分からないから、どこ迄押していっても構わないという了見だろう。
一時間も歩くと見物する物もないような狭い谷に住んで、外に何も芸がないから、私の身形を
飛行鬼のように触れちらかすんだろう。憐れな奴らだ。
子供の時から、こんな教育されるから、いやにひねっこびた、スティンキーの様な小人ができるんだ。
無邪気なら一所に笑ってもいいが、こりゃなんだ。子供の癖に乙に毒気を持ってる。
「こんないたづらが面白いか、卑怯な冗談だ。君らは卑怯という意味を知ってるか」と言ったら、
「旦那の裸帽子の破壊力のが卑怯ぢゃろうがな、もし」と答えた奴がある。
やな奴だ。
わざわざジャム作り中に、こんな奴を教えにきたのかと思ったら情けなくなった。