「諸君 私は〜が好きだ」をはって <2>

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371武道板住人
 諸君 私は剣道が好きだ
 諸君 私は剣道が好きだ
 諸君 私は剣道が大好きだ

 切り返しが好きだ 打ち込みが好きだ 懸り稽古が好きだ 剣道形が好きだ
 団体戦が好きだ 個人戦が好きだ 全日本が好きだ 世界大会が好きだ 八段戦が好きだ
 小学校で 中学校で 高校で 大学で 町道場で 警察で 日本武道館で 京都武徳殿で 海外で
 この地上で行われる ありとあらゆる剣道が大好きだ
 一列にならんだ 小学生達が 甲高い声と共に切り返しを始めるのが好きだ
 頭上高く振り上げられた竹刀が 相手の面をまともにとらえた時など 心がおどる
 二刀流の操る 小太刀が こすっからく牽制するのが好きだ
 掛け声を上げて 試合場の隅から 飛び込み面を打ってきた相手を 抜き胴で倒した時など 胸がすくような気持ちだった
 剣先をそろえた 選手の横隊が 立ち切りの元立ちを 蹂躙するのが好きだ
 恐慌状態の新入生が 既に声も枯れ果てても 何度も何度も掛かっていく様など感動すら覚える
 敗北主義の 選手達を試合場の隅で 吊るし上げていく様などはもうたまらない
 泣き叫ぶ相手が 私の振り下ろした左腕とともに 風切り音を上げる片手面打ちに ばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ
 哀れな抵抗者が 雑多な技で 健気にも立ち向かってきたのを 迎え突き気味の諸手突きが 相手ごと試合場外に吹っ飛ばした時など 絶頂すら覚える
 先輩の懸かり稽古に 滅茶苦茶にされるのが好きだ
 必死に守るはずだった先鋒の一勝が蹂躙され 代表戦に持ち込まれたあげく敗れていく様は とてもとても悲しいものだ
 相手の誘いに引っかかって 出小手を取られるのが好きだ
 相手に転ばされ 害虫の様に地べたに蹲るのは 屈辱の極みだ

 諸君 私は剣道を 地獄の様な剣道を望んでいる
 諸君 私に付き従う部員諸君 君達は一体 何を望んでいる?
 更なる剣道を望むか? 情け容赦のない 糞の様な稽古を望むか?
 鉄風雷火の限りを尽くし 三千世界の鴉を殺す 嵐の様な試合を望むか?

 剣道!! 剣道!! 剣道!!

 よろしい ならば稽古だ
 我々は満身の力をこめて 今まさに振り下ろさんとする竹刀だ
 だが この暗い道場の底で 半年もの間 鍛え続けて来た我々に ただの稽古ではもはや足りない!!

 大稽古を!! 一心不乱の猛稽古を!!

 我らはわずかに団体戦ぎりぎり 五人に満たぬ剣道部に過ぎない
 だが諸君は 一騎当千の古強者だと 私は信仰している
 ならば我らは諸君と私で 総兵力5000と1人の軍集団となる
 我々を忘却の彼方へと追いやり 眠りこけている連中を叩き起こそう
 面紐をつかんで 引きずり倒し 眼を開けさせ 思い出させよう
 連中に中堅で敗れる団体戦の味を 思い出させてやる
 連中に我々の 踏み込みの音を思い出させてやる
 天と地とのはざまには 奴らの哲学では思いもよらぬ技がある事を思い出させてやる
 五人の剣道家の戦闘団で 大会を燃やし尽くしてやる

 全員黙想 神前に礼
 面付け!! 全員横二列
「最後の稽古 主将より 全部員へ」
 目標 地区予選突破!!
 大会前強化合宿 切り返しを開始せよ

 行くぞ 諸君