ごちももでゴマニー パート17

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猛舞裸、猛血漬(もまいら、もちつけ)

古代中国において、北からの脅威に備える事もまた兵卒の務めであった。
馬を駆り攻め来る兵は強く、対峙する兵卒の恐怖は並々ならぬものだった。
その恐怖を忘れ、一種の興奮作用を引き起こす食べ物、「猛血漬(もちつけ)」が、兵卒の間で珍重された。
猛牛の血から作られた発酵食品「猛血漬」は、戦に出陣する兵士に振舞われ、
それを一度口に含むと興奮状態に陥り、周囲の様子を忘れただ戦を繰り返す、狂戦士化したのだった。
時に過剰な興奮の副作用により、気が触れてしまい、
戦場にも係わらず裸で踊りだすものまで表れたほどであった。「猛舞裸」(もまいら)
しかし恐怖から逃れたいがために必要以上を口にし、
敵味方関係なく暴れまわる兵卒が増え、次第に使われる事はなくなっていった。
そしていつの頃からか、「猛舞裸、猛血漬」(もまいら、もちつけ)は、
周囲が見えず、暴れる者への戒め・抑制の言葉として用いられるようになった。
尚「もちつけ」が今日常用されている「おちつけ」の語源となったことは言うまでもない。
現代の日本において、「もまいら、もちつけ」の言葉を聴くと、
周囲の状況も見えずに、恐怖を払いのけるように暴れる兵卒の悲しい姿が思い浮かばれてならない。

民明書房刊 「中国 幻の食文化 〜4000年の食卓〜」 より