連載小説「なにか?じゃねーよ、バーーーカ!」第11話
4月の終わり頃。
職場でたまたま春美と二人で話をする機会があった。
あの後も春美とは何度か飲みに行ったりしていたが、必ず彼女の友達
が一緒にくっついて来て、なかなか二人きりにさせてもらえなかった。
以前は春美はうちによく電話をくれたのだが、最近はめっきり来なく
なっていた。かといって、親と同居している女の子の家に電話するの
も気がひけた。
それでもどうしても連絡を取りたい時には、教えてもらった携帯の番号
にかけるのだが、なぜかいつも電源が切られていてつながらなかった。
・・・そんなこんなで、久々に二人きり。
春美は僕が思ってもいなかった言葉を口にした。
「今度、一緒に温泉に行かない?」
連載小説「なにか?じゃねーよ、バーーーカ!」第12話
「今度、一緒に温泉に泊まりに行かない?」
思いがけない言葉に心が弾んだ。が、人生そうはうまく行かない。
「○○くんと、私と、ゆり子と、3人で。」
ゆり子(仮名)というのは、僕と春美が会う時に必ずついて来る例の
友達だ。
それを聞いて少しがっかりした。でも、別にほかの男が来るわけじゃ
ない。もしかしたら3Pかー、なんて妄想を広げた。
既に旅館も予約してあるとのことで、後はその日が来るのを待つばか
りとなった。
出発の日の前日。仕事が終わると、僕は車を念入りに洗車して、明日
に備えた。お気に入りのブルーマイカの塗装が一段と輝いて見えた。
その夜、春美とゆり子が僕の部屋を訪れた。
だが、二人ともうつむき加減の表情で、黙ったままだ。
ようやく春美が口を開いた。
「ごめんなさい。実は・・・。」