野田、会期内採決を厳命も執行部ノラリクラリ
2012.06.18
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G20首脳会合出発前に報道陣の質問に答える野田首相=17日午後、首相公邸【拡大】
野田佳彦首相は17日午後、民主党の輿石東幹事長を首相公邸にひそかに呼び、自らが外遊中に
自民、公明両党と修正合意した社会保障・税一体改革関連法案の党内手続きを速やかに終え、
会期末(21日)までに衆院採決を行うよう厳命した。だが、輿石氏ら党執行部は相変わらずのらり
くらりと先送りを画策。政権はなお黄信号が点滅したままだ。
「輿石幹事長を中心に執行部のみなさまに全幅の信頼をおいており、しっかり対応してもらえるもの
と確信しております…」
17日夕、首相はメキシコへの出発を前に首相公邸で記者団にこう断じた。だが、言葉とは裏腹に
党執行部の「サボタージュ癖」への不信が渦巻いている。
首相は、18日中に党内手続きを終わらせ、帰国後の20日午前に両院議員総会か両院議員懇談会
で自らが法案成立に向け結束を訴える構え。その上で20日中に委員会採決、21日に衆院本会議採決。
会期延長も行い今国会での成立を期する。党執行部にもかねてこの方針を指示してきたが、
輿石氏らは面従腹背を続ける。
「内容がいかに良くても足元がしっかりしていないと実行できない。民主党の船団を組む作業が
一番大事だ。党内の議論は丁寧に集約しなければならない」
民主党の樽床伸二幹事長代行は17日のNHK番組で党内手続きを慎重に行う意向を示した。
衆院採決も「政局に結びつけるのではなく実行する観点で判断をする」とモゴモゴ。司会が「21日
までに採決するのか」と念を押しても「そういうピンポイントな質問でなく…」とはぐらかした。
これは明らかに首相の指示に反する。同席した自民党の田野瀬良太郎幹事長代行も血相を変えて
「樽床さん、先送りなんてことになると何もかも水の泡になってしまう。採決が21日より遅れることは
あり得ない!」と詰め寄った。
樽床氏が煮え切らないのは、衆院採決を強行すれば造反、党分裂が避けられないためだが、
その背後に輿石氏の影がちらつく。
民主、自民、公明3党の修正協議が一気に進んだ14日夜、輿石氏は閣僚経験者にこうつぶやいた。
「それなら21日に衆院採決になって党が割れて困るじゃねえか…」
15日までに協議をまとめるのは首相の強い意向のはず。閣僚経験者がそう指摘すると輿石氏は
人ごとのように「おっ、そうか…」。
輿石氏には、自らを引き立ててくれた小沢一郎元代表への義理があるだけに「党分裂させるくらい
なら法案を葬り去った方がよい」との思いがにじむ。
首相周辺からはこんな声も漏れる。「輿石氏は党内手続きを長引かせることで採決先送りの機運を
盛り上げ、混乱に乗じて会期延長せずに国会を閉じようとしているのではないか…」
だが、自民党は21日までに衆院採決しなければ内閣不信任決議案を提出する構え。そうなれば
首相が「伝家の宝刀」を抜くことも十分あり得る。選択肢は1つしかないはずだが、輿石氏が逡巡
(しゅんじゅん)する限り、混乱に拍車をかけることになる。(水内茂幸)
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120618/plt1206180643000-n1.htm