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無党派さん:
特異な小泉政権
この『拒否できない日本』には、『年次改革要望書』をテコに
アメリカが日本をアメリカ型の社会に「改造」していく過程が明らかにされています。
とりわけ小泉政権になってからは、イラクへの自衛隊派兵、郵政民営化法案の成立
牛肉輸入再開とアメリカ政府の要求がそのまま日本政府の政策となって実現しています。
なぜ、こうした状態になってしまったのでしょうか。
まず考えられるのは小泉首相と彼の政権の特異性です。
これが、アメリカの「日本改造計画」の背景です。
ゼーリックにとって、日本の条件は極めて好都合でした。
なぜなら、アメリカ型の構造改革を推進すると宣言した小泉政権が誕生したからです。
ゼーリックの任務は、小泉=竹中チームを支援し
彼らの「改革」がアメリカ企業の利益に合致するように監視することでした。
日本改造計画」の系譜
ところで、最近注目されるようになった『年次改革要望書』は
小泉政権が誕生するずっと前の94年から毎年、発表されているものです。
それ以前の日米関係は、貿易収支の悪化に伴って、個別分野で貿易摩擦が発生すると
日本側が輸出自主規制などによって対応する、というのが一般的でした。
ところが、89年9月、当時の宇野首相とブッシュ(父)大統領の間で行われた「日米構造協議」
93年7月の宮沢首相とクリントン大統領の「日米経済包括協議」を経て
アメリカの対日要求は次第に日本の伝統や慣習を含め、制度全体を変えようとする方向に傾いていきました。
この背景にはいわゆるリヴィジョニストらの「日本異質論」の台頭がありました。
そうしたなか、宮沢首相とクリントン大統領は93年の首脳会談で
お互いに相手国政府に対して改革の要求を出し合おうということになり
94年10月、第1回の『米国政府の日本政府に対する年次改革要望書』が発表されたのです(注)。
さらにその後、97年6月には「強化されたイニシアチブ」(日米規制緩和対話)が加わり
01年3月、森政権下で「総合規制改革会議」が設置されました。
(注)『要望書』はアメリカに関心のある6つの産業分野と5つの「分野横断的テーマ」を網羅していました。
6つの産業分野とは通信、IT、エネルギー、医療・医薬、金融、流通で
5つの分野横断的テーマは「競争政策」「透明性及びその他の政府慣行」「民営化」「法務制度改革」「商法」です。
小泉政権になって、対日要求の制度化はさらに進みます。
民営化の道をひた走ることになるのです。
『年次改革要望書』はお互いに要求を出し合うわけですから、当然、日本側もアメリカに出しています。
出してはいるのですが、日本の要求は包括的なものが多く
また日本側の腰が引けているため、ほとんど成果は上がっていません。
それに対してアメリカ側の要求は戦略的且つ具体的で、確実に成果を上げています。
これまで法制化された主なものを挙げてみると
持ち株会社解禁(97年)、NTT分割(97年)、建築基準法改正(98年)、株式交換制度の導入(99年)
有価証券の時価会計の導入(00年)、大規模小売店舗法の廃止(00年)、確定拠出年金制度(01年)
法科大学院の設置(04年)、裁判員法成立(04年)、郵政民営化法成立(05年)、外国株対価によるM&A(凍結中)などです。
これらはほとんどすべてアメリカの要求に基づいて日本政府が決定したものです。こ
うした法改正の結果外資による日本支配が急速に進みました。
小泉政権になってから邦銀の90%、製造業の70%、東京の主だったホテルのほとんどが米国資本傘下に置かれています。
しかし、小泉首相は外資の支配を「悪いこととは思わない」と平然と語っています。