「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵におなじ」
祇園精舎にある鐘の音は、諸行無常の教えを唱えるかのごとくに鳴り響きます。
釈迦入滅の時に白色に変じたという沙羅双樹の花の色は
あたかも盛者必衰の道理を表しているかのように思えます。
驕り高ぶった人もいつまでも驕りにふけっていることは出来ません。
それはあたかも春の夜の夢のように儚いものです。
勇猛な者でさえついには滅びてしまうものです。
それはあたかも風の前の塵のようなものです。
遠く外国の古例を捜し挙げてみると、秦の趙高、漢の王莽、梁の朱昇、唐の安禄山、
これらの人々は皆、旧主先皇の政治に従わず快楽を極め、他人の諫言を真剣に聞こうとせず
このままでは天下が乱れてしまう、ということを予測しませんでした。
また嘆き、悲しみ、憂い、戸惑う民衆を顧みなかったので末永く栄華を続けることが出来ませんでした。
そしていつしか滅びてしまった人たちでありました。