日本経済新聞 2010/04/30 朝刊
日米安保50年 普天間が問うもの (中)
「核なき世界」と眼前の火種
目算なき理想の危うさ
3月30日、カナダのオタワ近郊で開かれた主要国(G8)外相会合では、しらけた空気が広がった。
核軍縮の文言にこだわる岡田克也外相がフランスのクシュネル外相とやり合い、2人の議論が
約1時間も続いたからだ。
「議長声明には『核なき世界』を目指すことと、核の役割を限定することを盛り込むべきだ」。岡田氏
が求めると、クシュネル氏は「これ以上、どうやって役割を低減させるのか」と一蹴(いっしゅう)した。
ロシアのラブロフ外相もクシュネル氏に同調し、最後はクリントン米国務長官がみかねて「もういい
じゃないか」と引き取った。
岡田氏はオバマ氏が唱える核軍縮路線に呼応しているつもりだが、米欧主要国の常識は違う。
「核政策は核保有国である米英仏が主導するテーマ。米国の『核の傘』に頼っている日本が介入しよ
うとしても相手にされない」(軍事外交筋)
米はしたたか
そもそも、オバマ氏の核軍縮には国益を損なわないよう、したたかな計算も働いている。ロシアと
調印した戦略核軍縮条約の削減対象は配備済みの弾頭だけで、備蓄は含まない。岡田氏が長期的
な課題にかかげる核先制不使用にも米側は応じていない。
強大な核戦力を温存するロシアに近接するフランスや英国も冷徹だ。サルコジ仏大統領は「核軍縮
は幻影」と言い切る。
日本は北朝鮮や核軍拡に走る中国に囲まれている。こうした火種があるにもかかわらず、米国の
核抑止力を弱めかねない主張をかかげる鳩山政権は、米欧からみるとナイーブに映る。
「そんなことをしたら、世界の同盟国の安全が揺らいでしまう」。岡田氏が今春、米政府高官との会談
で核の役割限定を求めると、こんな答えが返ってきた。それでも日本の安全は大丈夫なのか――。
言外にこう言いたげだった。
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=2000117&tid=bbm5a8a4n2va4h3tbc0ejbbq&sid=2000117&mid=24027