【政治活動家】 本村洋 【犯罪被害者遺族】

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803週刊文春1
「光市の応援演説には本村さんがいらっしゃいました。本村さんは私に『頑張ってください、山本さん(自民党公認候補)を応援しています』とおっしゃった。本村さんは山本繁太郎さんに賭けたのです!」

 安倍晋三前首相がハイテンションでこう絶叫したのは、衆議院山口二区補欠選挙投票日前日の四月二十六日、岩国市内での応援演説においてだった。
 奇しくも選挙期間中の二十二日には広島高等裁判所において、選挙区内で起きた光市母子殺害事件の差し戻し控訴審で死刑判決が出たばかり。遺族の本村洋さんは時の人となっていた。
 演説を取材したジャーナリストの横田一氏が語る。
「安倍前首相は大げさな身振り手振りを交え、興奮気味に見えました。地元では自民党が光市の事件を争点にするという噂があったので、演説を聞いて、本村さんは公に山本候補を支持しているんだと思いました」
 実際に選挙期間中には、「本村さんが山本候補の応援演説をする」などの情報が流れ、新聞社系のサイトにも「(自民党は)山口県光市の母子殺害事件の遺族である本村洋さんまで応援に引っ張り出したほどだ」と報じられていた。
 安倍氏は岩国市の前に行われた光市での演説でも事件に触れていた。
「(今日は)本村さんも来ています。自民党は犯罪被害者支援に取り組んでいる」
 しかし、安倍氏の演説、実は大ウソなのだ。
804週刊文春2:2008/05/08(木) 20:21:56 ID:ZSFmuL5u
 本村氏本人が語る。
「選挙は大事ですから毎回演説会は聞きに行くんですが、判決前は影響を与えてはいけないと思いメディアの取材も全部断り、選挙演説も聞きに行かないようにしていました。ただ、判決のあとの金曜日だったと思います。
私の会社の近くに安倍前総理と山本候補が来ると聞き、裁判も終ったし、ちょうど会社が昼休みだったので、
確かにコッソリ一人で聞きには行きました。
 しかし、演説で名前を出されて本当にビックリしました。(山本候補を応援した事実は)まったくありません。自民党から応援を依頼されたこともありません。確認をとらないで(新聞社系サイトに)記事を書かれたことには
憤りを持っていますが、混乱を招いたのなら、演説を聞きに行かなければよかったと反省しています」
 ところが、安倍氏は本村氏の気持ちを慮ることもなく、岩国の演説では、犯罪被害者支援問題に触れてこうも語っていたのである。
「お嬢さんを無残に殺された本村さん。そのお嬢さんの遺影を持って私の所にやってきて『どうか安倍さん、この法律を通してください』と涙ながらに訴えたのです!」
805週刊文春3:2008/05/08(木) 20:22:56 ID:ZSFmuL5u
 それを伝えると、本村氏は思わず絶句……落胆し困惑した様子でこう続けた。
「私がいないところでそういう発言をされたことはどうかと思います。それに陳情したのは私ではない。遺影とかは出していませんが、私は小泉総理にお願いに行ったことはあります。安倍さんには光市での演説のときに初めて(聴衆の一人として)お会いしました」
 KYぶりもここに極まれりの暴走演説だが、安倍氏の姑息な本村氏の政治利用も虚しく、自民党は「ガソリン」と「老人いじめ」のダブルパンチで民主党に約二万票差で完敗。福田政権の支持率は二〇パーセントを切ってしまったのである。
 ジャーナリストの上杉隆氏は最近、安倍氏は“躁状態”にあるのではないかと指摘する。
「落ち込んでいるかと思って安倍さんに会うと、異様に明るいので周囲は戸惑っている。いつもハイテンションで、『もたないね福田も』など福田首相への悪口も多い。政権を投げ出して国民にも自民党にも大迷惑をかけたのに、なぜハイテンションになれるのか。
自民党議員のなかでも違和感を持っている人は多い」
 KY男の軽薄な上機嫌には手がつけられない。だが、その軽さが犯罪被害者遺族の思いを踏みにじったことは、決して許されることではない。