>>1 「美しい国」の実情惨状、「再チャレンジ」の嘘八百
安倍首相が法人税の引き下げを言い出した。具体的には、企業の設備の価値減少を経費に認める「減価償却制度」の拡充だ。
07年の税制改正で現行の95%の償却限度額を撤廃し、全額償却できるようにするという。これによって、法人税は最大6000
億円も減るから、企業の設備投資意欲はアップ、経済が活性化して税収はプラスになるというソロバン勘定だ。だが、本当にそん
なにうまくいくのか。英誌エコノミストの編集長はこう指摘している。
「増税に頼らずに経済成長で財政再建を成し遂げようとする試みは他の国でも行われてきたが、それが難しいことは、(2001〜
03年の減税で財政赤字が膨らんだ)アメリカの例でも明らかだ」
問題は、企業を減税で潤わせても、従業員への再分配がまったく行われていないことである。
経済評論家の広瀬嘉夫氏が言う。
「企業収益が伸び続けている今、法人税を減らさなくても企業は十分にやっていけます。設備投資は生産過剰にもつながるため、
企業は頻繁に行うわけではない。肝心なのはGDPの半分を占める個人消費。安定した景気回復には個人消費の伸びが欠かせ
ないのに、企業は利益を従業員に分配しようとしないから冷えたままです。法人税減税の前に、まずは所得税を減らすべきなの
です」
先進国の中でも日本の法人税率30%を下回っているのはドイツの25%だけ。中国も日本より上だ。その逆を行く日本は勝ち組
と負け組の格差が広がる一方の「美しくない国」へまっしぐらだ。
安倍は「小泉改革の継続」を掲げているが、そもそも「改革の成果で企業が立ち直った」というのは虚構だ。好決算は国民をとこ
とん痛めつけた結果でしかない。
第1はゼロ金利によって不良債権を抱える銀行と企業を救ったこと。日銀の福井総裁は国会で「93年からの低金利で家計が失
った利子所得は154兆円」と答弁した。要するに国民1人当たり120万円、4人家族で実に480万円が金融機関に“所得移転”し、
企業の負債も金利分が身軽になったのである。
第2にサラリーマンの給料をトコトン抑えたことだ。財務省の統計によれば、01年から05年の全産業の経常利益の伸びは83%。
これが「美しい国」の現状。安倍は再チャレンジ策として、「2010年までにフリーターを8割に減らす」とか「30歳前後のフリーター
の職業訓練、能力開発を進める」と言っている。しかし、こんなのは庶民の痛みが分からないオボッチャン首相の机上の空論だ。
「本気でやるなら企業にフリーター採用を義務化するとか、派遣業の対象を元に戻すことをすべきです。でないと自腹で職業訓練を
受けても就職できないのだから、生活はもっと苦しくなる。再チャレンジの場所すらないのですから、安倍氏の政策は口先だけです」
(本澤二郎氏=前出)
だいたい、派遣社員を請負と偽って安くコキ使っていたキヤノンの御手洗冨士夫会長を経済財政諮問会議のメンバーにしているの
だから、話にならない。
この国を支えている労働者の大部分が額に汗してまじめに働いているのに、なぜ貧乏暮らしを強いられているのか。これが緊急か
つ最大の政治課題だ。しかし、安倍は官邸の機能強化だのリーダーシップだのと権力をもてあそぶことばかり。国民はいつまで「お人
よし」でいるつもりなのか。
【2006年10月6日掲載】
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2547872/detail?rd