■安倍氏苦悩 歯切れ悪く 総裁選での争点化回避狙う
http://www.sankei.co.jp/news/060816/sei030.htm 安倍晋三官房長官は15日、小泉純一郎首相の靖国神社参拝について「首相の一政治家
としての判断に政府として見解を述べるべきではない」と慎重な言い回しに終始した。
9月の自民党総裁選で「靖国問題を争点化したくない」との判断だが、かつては強硬な
参拝支持派として知られてきただけに「次期首相の座が見えてきたとたんに対中、対韓
外交を意識した」(閣僚経験者)といぶかしむ声も上がる。
安倍氏は記者会見で、中韓両国の批判について「誤解があれば誤解を解く努力をしたい。
個別の問題があったとしても、対話の扉を開くことが両国の発展につながる」と述べ、首脳
外交と引き換えに参拝中止を迫る中韓の手法を暗に批判。日本の戦争責任については
「歴史家が判断すべきことだ」と評価を避け、次期政権への影響は「ない」と断言した。
靖国参拝問題は、安倍氏が総裁選を意識し始めた2月ごろから、もっとも重い課題だった。
「国のために殉じた方々に国家のリーダーが尊崇の念をささげるのは当然の責務だ」と思
う一方、靖国問題が争点になれば、A級戦犯分祀論や政教分離問題などが噴き出し、「保
守勢力が割れ、中国や国内のリベラル勢力を利するだけだ」との思いもあり、葛藤が続い
た。
んだ末の結論は「参拝は行動で示し、議論には黙する」だった。首相が8月15日に参拝
する公算が高まる中、一緒に参拝することも考えたが、「政治色の強い終戦記念日ではな
く、春、秋の例大祭に参拝すべきだ」と見送った。4月15日の参拝はギリギリの選択であ
り、総裁選でも、靖国をめぐる議論は回避する考えだ。
しかし、「沈黙戦術」はリスクも大きい。中韓両国に「安倍氏は首相になれば参拝しない」
という誤ったメッセージを送ることになりかねないためだ。中韓両国と首脳会談を実現し
た後で靖国神社に参拝すれば、小泉首相を上回る反発も懸念される。もちろん首相になれ
ば「黙って参拝する」という戦術は使えない。