771 :
無党派さん:
結局のところ、連合国がこの11条に込めた意味というのは、こういうことです。講和
条約が発効すると、占領中になされたもろもろの政策はすべて失効し、東京裁判などの
戦争裁判で有罪を宣告されて投獄されている戦犯も釈放されねばならない。日本に対
する戦争裁判の最後の判決は昭和26年4月ですから、そこで重刑を受けた戦犯でも1年
かそこらで釈放されることもありうる。連合国としてはそれは困る。だから、投獄されて
いる戦犯を赦免したり、減刑したり、仮出獄させる権限は、連合国側との了承の下でやら
ねばならず、日本国政府のみで勝手にやってはいけないということを取り決めた。これが
11条の意図なのです。
だから、毎日は第11条の前半部分だけを引用していますが、その後の部分に、戦犯の
赦免、減刑、仮出獄につ いては、連合国の決定が必要だという条文が続いています。つま
り、これは東京裁判の判決の効力を講和条約が発効した後も維持させるために入れた条
項で、重点は条文の後半部分にあり、毎日が引用した前半はその説明文なのです。事実、
当時の国会においても、外務省の西村熊雄条約局長がそうした趣旨の答弁をしています。
ですから、講和条約発効後は、投獄されている戦犯の方々の赦免・釈放などは国際問題
となるけれども、それ以 外の事柄で日本国政府や日本国民が戦犯として亡くなられた人
々をどう処遇するかということは、日本国民自身の判断に委ねられるべきであって、サン
フランシスコ講和条約とはなんら関係がない事柄なのです。
また、もし、戦犯合祀が国際問題になるのであれば、出獄された方々の処遇も国際問題
になるはずです。しかし、例えば中曽根さんと同じ改進党に属し、総裁までやった重光葵
さんは、A級戦犯として禁固7年の判決を受けたけれども、その後外務大臣までされ、日ソ
交渉の立役者でもあった。あるいは、賀屋興宣さんは終身禁固刑に処せられた。しかし、釈
放後、衆議院議員になり、法務大臣までされた。仮にA級戦犯合祀が講和条約違反との見方
が正しいとすれば、このお2人の復権は当然講和条約違反ということになるのではない
か。しかし、そうした批判は連合国からはまったくなかった。 こう考えますと、サンフラ
ンシスコ講和条約によってA級戦犯合祀が拘束されるといったようなことは、法理論から
見ても全然話にならない。