647 :
無党派さん:
「そうか」。
最高司令官の返事はあまりにも素っ気なかった。
その部屋には日の丸が掲げられ、外壁を兼ねた厚さ五aの防弾ガラス越しに
しなやかな竹などが植え込まれた静かな庭園が一望できた。
陸上自衛隊のイラク派遣を控えていた二○○三年秋。
前年建て替えられた真新しい首相官邸の執務室。
チョッキ姿にスリッパ履きの小泉純一郎首相は、派遣先の治安情勢などを
詳細に説明する防衛庁幹部の話に、まったく興味を示さなかった。
南部ムサンナ州サマワ。
「どこでもイラクに自衛隊を出せれば、それでいい」。
小泉首相はそんな姿勢だった。