218 :
無党派さん:
【講和条約「解釈」の誤りを正せ】 元衆院議員 森 清(神奈川県藤沢市)
サンフランシスコ講和条約第十一条について、「『判決は受け入れたが裁判全体
を認めたわけではない』という意見があるが」との問いに対し、「裁判の結果を受
け入れた以上、それにいまさら異議を唱えるようなことをしたら、国際社会で信用
されるわけがない。条約を守り、誠実に履行することは、国際社会で生きていくた
めに最低限守らなければいけないことだ」と後藤田正晴氏が答えている(七月十三
日付朝日新聞)が、基本的なところで誤っている。
十一条の正文は「Japan accepts the judgments(英語のほかにこれと同
じ表現のフランス語、スペイン語)」であり、条約は正文によってのみ解釈される。
日本文で「裁判を受諾する」とあってもこれは条約ではなく、単なる翻訳文にすぎな
い。
「judgment」は英米法の法律用語では「判決」であり、「裁判」という意味はな
い(通俗的な用法では「裁判」と和訳した英和辞典もある)。「英米法辞典」(田
中秀夫ほか編)のほか、「新英和大辞典」(研究社)や「ランダムハウス英和大辞
典」(小学館)でも「裁判」という和訳はない。
講和条約の本質は、戦争中の行為は一切なかったことにするというものであり、
軍事裁判もその戦争行為の一つになるのであるが、判決でまだ執行が残っているも
のがあるため、それについて特に定めたのが第十一条である。
第十一条を正確に翻訳する(かっこ内は流布されている訳)と、「日本国は、極
東軍事裁判所・・・の判決(裁判)を受諾す。よって(受諾し、且つ、)日本国で拘
禁されている日本国民にこれらの法廷が科した刑の宣告(刑)を執行するものとす
る。(以下略)」。
この条文を見れば、明らかに判決の未執行部分についての定めであり、軍事裁判
そのものに関する規定ではない。「東京裁判を受諾した」という条約はなく、誤訳
した日本文があるにすぎないのに、それを基礎にしているのである。
外務省がなぜこのような誤訳をしたのか分からないが、今からでも遅くない、条約
の正文を正しく翻訳して公表し、戦犯をめぐる条約問題に終止符を打つべきである。