米軍の無差別爆撃、原爆投下とともに忘れてならないのは、終戦直前、旧ソ
連軍が日ソ中立条約を破って満州に侵入した行為である。関東軍将兵ら六十万
人がシベリアなどに抑留され、うち六万人が強制労働で死亡した。満州や朝鮮
半島から引き揚げる途中、ソ連兵の暴行などで死亡した日本人は二十万人を超
える。
近年、ヨーロッパでも、第二次大戦中の戦勝国の非人道的な行為を検証しよ
うという試みが始まっている。
先月十三日、ドイツ東部の古都、ドレスデンで、大空襲六十周年の式典が催
された。東京と同様、米英空軍の焼夷弾による無差別爆撃(ドレスデン空爆)
を受け、数万人の一般市民が死亡したといわれる。戦後、ドレスデンは東独に
属し、ホロコーストへの負い目もあって、連合国への批判が控えられてきたが、
六十周年の式典では、五万人の市民がロウソクをともし、犠牲者を追悼した。
ポーランド政府は、旧ソ連が自国の将校ら二万人以上を虐殺した「カチンの
森」事件(一九四〇年)の真相解明に着手している。
戦争はいつの時代も、勝者の側から見た歴史だけが語られがちである。戦後
六十年を機に、敗戦国日本の側からも冷静に戦争を見つめ直したい。
http://www.sankei.co.jp/news/050310/morning/editoria.htm