明確なマニフェスト民主VS曖昧なマニフェスト自民

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484佐藤総研
■自民VS民主 総選挙の争点は何か

来月9日の投票日を控え、自民党と民主党の対決ムードが高まって来た。
小泉自民党が、「ソフトで爽やかな鷹」安倍晋三を幹事長に据え選挙の看板とする
一方、民主党は、小沢自由党と合併し二枚看板を全面に押し出している。

だが、本来争点となるべき政策面では、今後のマスコミの報道ぶりにも左右される
が、「抵抗勢力」と官僚に配慮して玉虫色の表現にした自民党の政権公約と、それ
よりましとは言え、先送りも目立つ民主党のマニフェスト同士では、議論が噛み合
わないまま投票日を迎える可能性が高い。

そこで、それぞれが目指す(であろう)大きな観点からの日本の進路を比較する事
を、選挙の争点、有権者の立場からの投票のための主たる判断基準に据えるべきで
あると筆者は考える。

先ずその比較の前に、日本が取るべき進路の範囲を限定する作業が必要であるが、
そもそも本質的には日本に選択の余地は殆どない。
485佐藤総研:03/10/19 14:03 ID:GpZFY/2r
◆ビジョン、社会の将来像◆
第一点として、ビジョン、将来の社会の姿をどう描くかについては、国際競争に堪
え得る産業や企業、個人を生み出すように規制を原則撤廃し、地方分権を進め自由
度を上げた自立社会にする必要がある。
それと同時並行してナショナルミニマムとしての社会保障、治安、防衛、社会イン
フラの整備、技術立国としての戦略的投資を国家の責任として強固かつ効率よく進
める必要がある。

これにより、発展と調和の同時実現を追求すべく、自己責任に任せる領域を大胆に
広げると共に、最後の砦の部分は国家が維持し安心を提供するメリハリのある社会、
言い換えれば、言わば「逆T字型社会」に構造的に組み替える事が必須であり、日
本にそれ以外の選択肢は無い。
「大きな政府VS小さな政府論」と言うのがあるが、大きな方向性としては小さな
政府を目指すべきだが、2極対立で社会を斬るという論点は大雑把過ぎ、少なくと
も今後の日本の進路を論ずるには時代遅れである。
486佐藤総研:03/10/19 14:03 ID:GpZFY/2r
◆対米戦略◆
第二点として、外交上の基本戦略について、今後日本は無条件でアメリカに付き従
う「属国」として生きるのか、距離を置くのかの問題がある。
これについては、先ず唯一の超大国となったアメリカと唯一の地球規模の安全保障
問題の調整機構である国連との関係を整理する必要がある。

アメリカは、国連を最後は無視してイラク戦争を始める等、その強引さと恣意性を
伴った「新帝国主義」ぶりを他国から危険視されている。
一方の国連は、イラク戦争開戦の過程等でその無力さを露呈した。

少々乱暴な例えを使えば、アメリカは武力を背景に実権を握った幕府であり、国連
は権威を象徴する朝廷である。
占有、分有に拘わらず、権威と権力が両立しないと長期的には世の中は治まらない
のは、東西の歴史に観察される所である。

日本は、国際秩序と国益を守るために、親米路線を基軸とする一方、錦の御旗とし
て国連中心主義を掲げ国連を盛り立てつつ、「もの言う親米路線」を取るべきであ
る。
言い換えれば、国連とアメリカの公武合体を図るべく、国際社会での役割を担うべ
きである。
そのための発言力を持つために、自国の防衛は自国で責任を持つと伴に、国連のオ
ペレーション全般に参加出来る態勢に、憲法、国家体制、戦力、設備を整備するべ
きなのは論を待たない。
487佐藤総研:03/10/19 14:05 ID:GpZFY/2r
◆自民党の目指す方向◆
しかるに、自民党の目指す社会の姿はどんな物であろうか。
勿論、小泉首相と抵抗勢力では180度違うだろうが、それでは民主党との比較論
が成り立たないので、先ず小泉首相の描くものを推察すれば、漠然とした「アメリ
カ型の弱肉強食型市場経済」であろうか。

日本社会が自由度を増すべきなのは論を待たないが、アメリカン・ドリームを成り
立たせる移民国家という前提条件を持った本家でも貧富の格差の拡大により社会の
分断を招いているこのモデルを推し進めれば、現実的に考えれば日本の社会は持た
ないだろう。

そこに抗っているのが抵抗勢力と官僚となるのだが、強いて言えば自民党全体とし
ては、結果として彼等の主張と「アメリカ型の弱肉強食型市場経済」と言う正反対
のものを足して2で割った背骨の無い軟体動物のような社会像を提示していると言
える。

また、対米関係では、「属国」という言葉が適当かは別として、小泉政権は北朝鮮
問題関連等での「国益重視」のため、今後日本は無条件でアメリカに付き従う腹を
決めた様だ。
その是非を別にすれば、シンプルで判り易くはある。
488佐藤総研:03/10/19 14:05 ID:GpZFY/2r
◆民主党の目指す方向◆
一方の民主党の目指す社会の姿も鮮明とは言えない。
今までの軟弱なイメージを払拭するために、「強いニッポン」をキャッチフレーズ
にしたようだが、先日の自民党総裁選のある候補者が唱えた「心身ともに美しい日
本」と同様、単一要素によって出来ており内部に構造を持たない言葉のため、現実
に対して働きかける機能を有しない文字通りの単なるキャッチフレーズに終わるだ
ろう。

菅代表はまた、「最小不幸社会」を唱えているが、「強者に対しては政治は支援も
制約もせず、不幸を作り出さない事を政治の中心に据えるべきだ。」の解説を聞け
ばそれなりに理解できるが、有権者には届き難い。
また、どうしても弱者保護のニュアンスが含まれる上に、前述の「強いニッポン」
との関係は不明である。
むしろヨーロッパからの借り物の言葉にせよ「第三の道」と表現する等して、目指
す社会像を早急に明確にすべきであろう。

また、対米関係では、国連中心主議を掲げる一方、「もの言う親米路線」にも言及
しているが、国連とアメリカの関係を明示していなく、事に当たった場合、両者の
間で右往左往する印象がある。
事実上の選挙戦が始まってしまった以上、菅代表は強引にでも主導権を発揮して、
両者の関係に関し民主党としてのスタンスをクリアに定義して簡潔に述べる必要が
あろう。
489佐藤総研:03/10/19 14:06 ID:GpZFY/2r
◆まとめ◆
前述したように、本質的には大きな観点からの日本の取るべき進路はほぼ決まって
おり、その中で両党がどうそれに近いものを打ち出してくるかが本来争点となるべ
きである。

また、郵政問題、高速道路問題、社会保障、行財政改革、経済政策、産業政策、規
制撤廃、地方分権、イラク問題、北朝鮮問題、防衛、外交一般等も、この大きな観
点からの日本の取るべき方向性に基づけば自ずと答えは限定される。

投票日までもう日にちが限られるが、両党は、パフォーマンスだけに頼るのではな
く、一方細かい個別論だけに入り込むのでもなく、大きな方向性とそれに基づき整
合性を持った形で具体的政策を国民に問い掛けるべきだろう。

佐藤総研 http://www.mag2.com/m/0000102968.htm