●まず、加藤秀治郎京都産業大学教授(訳書:ダーレンドルフ著「新しい自由主義」、著書「戦後ドイツの政党制」など)
「どれが本物 社民リベラル」より抜粋
まず、欧州のリベラルとアメリカのリベラルは異なる。
アメリカのリベラル:
アメリカでは社民を名乗る勢力は存在しないに等しい。
だが、西欧社民のような勢力がないわけではない。
いわゆる「リベラル」がそれをも包み込むように幅を広げて存在している。
西欧なら「社民」となる勢力が、アメリカでは「リベラル」の中に存在するのである。
アメリカの読者に西欧政治を説くのに、
政治学者G・スタイナーがあげている例を借りると、
エドワード・ケネディ、G・マクガバン、W・モンデールといった民主党リベラル派は、
西欧なら社民とみなされるのである。
「リベラル」は直訳すれば、自由主義だが、実際の政策となれば、
著しく社会民主主義的である。
欧州のリベラル:
近代の改革思想として生まれており、かなり保守主義とは特徴を異にする。
伝統は無条件に尊重されるべきではなく、伝来の権威や偏見については批判的に検討し、
漸進的に改革しようとする。
現代の文脈でいうなら、新保守主義はサッチャーに代表されるようが、
徹底した自由競争が求められる。
これに対して自由主義者は、自由競争を認めるものの、
その前提として「機会均等」の条件整備に関心を寄せるのである。
それを徹底していくと、社民左派の主張する「結果の平等」に近いことにもなっていく。
(コメント:英国の自由民主党はむしろ労働党よりもある意味「左派」的かもしれない)
保守主義と自由主義の相違は国により、いろいろな表れ方をするが、
右のような特徴からして自由主義のほうが進歩的である。
社民との関係では、戦後になって社民が中道化を進め、また自由主義が1960年代後半に
「社会的自由主義」を掲げるなど、社民との距離を縮めている。