「許されない中選挙区復活」(日経社説より)

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329一学生
>>325
私が問題にしているのは、
オーストラリア下院選式とロンドン市長選式の「呼称」についてです。
もちろん、両方式は同じカテゴリーに入ります。

まず>>323の「票移譲式」という用語は明らかな誤りです。
票以外に移譲するものは選挙には存在しないので、そのような呼称はありません。
以下では、豪方式とロンドン方式を「移譲式」と呼ぶのが、なぜ適切でないかを論じます。
330一学生:01/10/21 04:12 ID:j7Z0Rfj1
(329の続き)
>>317の西平重喜氏をはじめ(317への反論は>>319参照)、
豪方式やロンドン方式を「移譲式」と呼ぶ学者は少なからず存在します。
しかし、それらの学者は政治学の専門家ではない場合が多いと思います。
特に、法学系の人に多いようで、司法試験や公務員試験対策の分類では、
豪方式を「移譲式」に分類する例をしばしば見かけます。
ここでは、私が使用しているテキストである、
『選挙制度の思想と理論』(加藤秀治郎編訳、芦書房)を基にして説明します。

選挙制度の分類には、「選挙区制」「代表制」という2つの大枠があります。
<選挙区制>(2種類)
小選挙区制(定数1)、大選挙区制(定数複数)
<代表制>(3種類)
多数代表制(当該選挙区で投票の多数を獲得した者に議席を与える制度)
比例代表制(政党の得票に比例して議席を配分する制度)
少数代表制(日本独自の分類。多数代表制よりも少数派に議席獲得可能性がある制度)

この2つの分類を組み合わせると、選挙制度は6分割されます。
<小選挙区制・多数代表制>(小選挙区制【英・米・仏・豪など】)
<大選挙区制・多数代表制>(大選挙区完全連記制【フィリピン上院など】)
<大選挙区制・比例代表制>(比例代表制【スウェーデン・オランダ・独・アイルランドなど】)
<大選挙区制・少数代表制>(大選挙区単記非移譲式投票制=「中選挙区制」【以前の衆議院】、
大選挙区制限連記制、累積投票制)
当然、小選挙区制・比例代表制、小選挙区制・少数代表制は存在しません。
豪方式、ロンドン方式は小選挙区制・多数代表制です。
※これらの制度を組みあわせたものは「混合制」(小選挙区比例代表並立制など)とも呼ばれる。

多数代表制は2種類に分けられます。
<相対多数代表制>(小選挙区単記制=「単純小選挙区制」、大選挙区完全連記制)
<絶対多数代表制>(決選投票制=小選挙区2回投票制、選択投票制)
豪方式・ロンドン方式は、絶対多数代表制の選択投票制に分類されます。

最終的に、選択投票制の中で、豪方式は優先順位付投票制、
ロンドン方式は優先投票制に分類されます。
331一学生:01/10/21 04:42 ID:j7Z0Rfj1
(330の続き)
以上が、政治学的に正確な分類だと思います。

何で、豪方式やロンドン方式=「選択投票制」を「移譲式」としないのかといえば、
「比例代表制」の一種である「単記移譲式(single transferable vote)」との
混同を避けるためではないかと思います。制度自体は明確に違いますし、
用語としても、選択投票制はalternative voteの訳で、全く異なります。
ちなみに、>>323のリンク先でも「移譲式」の用語は出てきてません。

補足ですが、
単記移譲式(STV)はアイルランドで採用されています。
比例代表制は単記移譲式と「名簿式(拘束名簿式、非拘束名簿式など)」に分けられます。
また、相対多数代表制はplurality system、絶対多数代表制はmajority systemの訳です。

オーストラリア式の説明をしているHPを見つけたので、リンクを貼っておきます。
http://homepage1.nifty.com/yk/memo/memo200102.htmの2001/04/14です