【プロジェクトG〜ゴキブリたち】
〈Vitaの挑戦。奇跡の初月100万ハード。〉
そのとき、ゴキブリは意外な事を言った。
100万台以上売ってみたらどうだろう。
SCEは戸惑った。
100万台売るという事は、実際に用意する数はそれ以上、広告費も掛かる。
それをやれと言うのだ。
無理です。出来ません。
SCEは思わず叫んだ。
俺たちがやらずに誰がやるんだ。俺たちの手でPSWを再興するんだ。
ゴキブリの熱い思いに、SCEは心をうたれた。
ステマの血が騒いだ。
よしやろう!目指せ100万台!
夜を徹しての作業が始まった。
品質を落とし、材料費を削り、安定性も放棄する。
商品として全く異常な作業だった。
技術的に完成はしないと思われた。
他の部署にも相談した。
飲酒量も増えた。
しかし、出てくる答えは一つ、「不可能」。
しかしSCEは思った。
「出来る、いや出来ると信じなければ出来ない」
SCEは図面を引いた、繰り返し、繰り返し、、、
一日が過ぎ、一週間が過ぎ、一ヶ月が過ぎようとしていた。
しかし、図面は上がらなかった。
頭の中には一つの言葉しか出てこなかった「不可能」。
そのとき、SCEはふと思った。
「不可能なんだ、不可能なことをやろうとしているんだ…」
そこへSONYが現れた。
そしてこうつぶやいた。
「考え方を変えるんだ。」
「ハードを売るという事はどういうことか、考え方の根本を変えるんだ」
SCEには理解が出来なかった。
SONYはこう続けた。
「ハードを売るということは、必ずしも動くものを売るという事だろうか?
いや、ハードメーカーにとって、ハードを売るということは、
動くものを売ると周囲が既に認めていることなのではないか。」
暗闇に光がさした気がした。
SCEは、また机に向かった。
翌日、そこには完成した図面があった。
図面を検査したのは誰もいなかった。
根拠のない自信があった。
「必ず売れる、いや売って見せる」
そして、運命の日。
「Vita発売」
不可能だと思われていた。
いや誰もが100万は不可能だと信じて疑わなかった。
そして、やはり不可能だった。