次世代ゲームでセル展開、米IBM副社長に聞く――高い拡張性、用途広がる。
米IBM副社長に聞く
米IBM副社長のチェキブ・アクラウト氏の一問一答は次の通り。
――二月に米サンフランシスコで開かれるISSCC(国際固体素子回路会議)では「セル」についてどこまで公表するのか。
「すべてを公表するわけでなく、四枚ほどの紙でセルの技術的な特徴や導入に向けた戦略などを説明する。量産の具体的な日程などはまだ明らかにできない。セルを使った具体的な製品の公表も後日になる」
――使用する基本ソフト(OS)は何か。
「新型のOSを利用する。セル自体は複数のOSに対応が可能で、用途に応じて使い分ける。ただ、ゲームやグラフィック機能を最大限に引き出すため、専用OSを開発している」
――セルの用途は。
「やはり当面は次世代ゲームが主な用途になる。高速インターネットなどを通じて
多数の人や集団が参加するオンラインゲームでは、ばく大な情報のリアルタイム処
理ができる技術の基盤作りが欠かせない」「ゲーム以外の用途開発はこれから。セ
ルは高度な拡張性を持つように設計されている。優れた物理特性を持つ半導体と、
AI(人工知能)などのソフト技術を組み合わせることで、今まで存在しなかった
アプリケーションができるはずだ。優れた性能を持つ半導体が、次世代の用途開発
の可能性を広げると信じている」
――ソニー、東芝との開発体制はどうなっているのか。
「両社とは日常的に対話している。オースティン開発研究所にはソニーや東芝の技
術者が常駐している。ソニーの久多良木健副社長など幹部とも連絡を取り合ってい
る」「我々は次世代ゲームなどに関するソニーのビジョンを共有している。ソニー
の描く戦略は強力、かつ精巧だ。問題は実現に不可欠なハードやソフトを用意する
ことだ。セルには既存のあらゆるプロセッサーよりも優れた機能を持たせる」
――IBMにとってセルの位置づけは。
「事業を補完する重要なプロセッサーになる。まず、セルを使ったワークステーシ
ョンを開発し、さらなる展開を考える。セルはゲームや高速大容量(ブロードバン
ド)通信の環境に適しているが、(情報システムを主力とする)当社の事業領域で
も応用可能だ」
――なぜIBMがゲーム用の技術に関心を持つのか。
「情報システムとゲームが必要とする次世代の中核技術が非常に似通っているため
だ。これまでコンピューターの先端技術は情報システムを使う企業などからのニー
ズをくみ取る形で開発されてきた。最近はソニーなどゲーム産業からの要求が技術
を進歩させる新たな流れが加速している」「セルは単なるゲームやデジタル家電用
のプロセッサーではない。スーパーコンピューターにも転用できる拡張性を備えて
いる。ソニーもゲーム以外の用途を考えているはずだ」
――セルの第二世代の課題は。
「第一世代のセルは高い性能を持つが、性能を高めるには電力の漏れなどに対処す
る必要がある。こうした課題を新たな発想で解決していく。第二世代についてはす
でに基本的な設計思想などについて議論を始めた」