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@とりあえず再生の舞を舞いに行く

(私が……やらなくちゃ……)

すべての元凶は鏡を割ってしまった罪から始まっている。
でも今の私なら、手にした力で再生させることができる。

神器も神宝も大昔のこの世界なら、本来の器がまだどこかにあるはずだ。
陣の中心にあるかがり火の光に吸い寄せられるように、私はゆっくり歩みを進める。

「撫子の君! 待ってくれ!」

守屋さんが私に駆け寄ってきた。
その手には、薄桃色のキラキラと光る薄くて細長い布が握られている。

「それは?」

守屋さんが手に持っている布を見ながら、私は問いかける。

「これは比礼だ。身に着けた者の穢れを払い、難から逃れる呪力を持っている」
「これを私に……?」
「そうだ。兵の皆のために舞を披露する君にこそ相応しい」

手渡された比礼という布は透けるほど薄いけれど、魅入られるほど美しかった。
まるで昔話に出てくる天女が纏っていた、天の羽衣みたいだ。

「でも……これは守屋さんの大切なものなんじゃないですか?」
「ああ。本当は出雲の姫……壱与に贈るつもりだった物だ」
「壱与……」

守屋さんと壱与はどういった関係だったのだろう。
私の中にある壱与の記憶に、守屋さんは居ない。
私の頭に浮かんだ疑問を見透かしたように、守屋さんは薄く笑った。

「幼少の頃、私は壱与に振られていているんだよ。また再挑戦するつもりだったが、今となってはそれも叶いそうに無い」
「振られる? 壱与にですか?」
「残念ながらな。石見国の王族だった私は……出雲国王に招かれたのだよ。政略結婚の相手としてね」
「政略結婚?」
「ああ。だが壱与はその事を知らない。おそらく壱与にとって私など、ただの幼馴染でしかないはずだろうな」
「もしかして……あなたは『弓削(ゆげ)』?」
「!!……どうしてただの遊行女婦である君が……私の幼名を知っている!?」

目を見開いて驚いている守屋さんと記憶の中の弓削が、ようやくひとつに繋がる。
『弓削』という名の弱虫で泣き虫な男の子と遊んだ楽しい記憶。
いつも壱与が連れまわしていて、そんな壱与に必死で付いていくような男の子だった。
そんな楽しかった頃の記憶が、巫女の修行に明け暮れていた頃の壱与にとって唯一の慰めだったのだ。

私は……
@さらに続きを話す
A舞を披露する
B夢から覚める