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A心配なので学校を休むように説得する
「先輩、もしかして力を使いすぎたんじゃないですか? 」
心配しながら冬馬先輩を覗き込むと、浅かった呼吸は幾分収まってはいるようだ。
だけど、立っていられないのか相変わらず壁にもたれたままだった。
「なんだか、すごく苦しそうだよ」
「いえ、本当になんでもないです」
「……私に何か出来る事は無いかな?」
「すぐに治るので平気です。愛菜は学校へ行ってください」
「……でも」
「僕の場合、数十分こういてしていれば……ですから気遣いは必要ありません」
「そんな、心配なのに」
「心配など無用です」
「やっぱり駄目! そんな顔してる先輩を置いて学校に行けるわけ無いよ!」
言葉とは裏腹に全然大丈夫そうには見えない冬馬先輩に向かって、私ははっきりと言い放った。
そして、私と冬馬先輩の様子を黙ってみていた隆に声を掛ける。
「ごめん、隆。先に学校に行ってて」
「なんなら俺も居てやろうか」
「大丈夫。それより学校に行って担任の先生に少し遅刻するって言ってほしいんだ」
「そうか。わかった」
隆は私の言葉に頷くと、学校へ向かって走り出す。
それを確認して、私は再び冬馬先輩に声を掛けた。
「先輩、そんな体調ですし今日は学校をお休してください」
「……………」
「私でよければお家まで送りますよ」
「……………」
「冬馬先輩?」
壁にもたれて、黙ったまま目を閉じている先輩に話しかける。
だけど、冬馬先輩は私の言葉に薄くしか反応も示さない。
「……………」
「先輩?」
「………………」
「冬馬先輩、本当に大丈夫ですか!?」
不安に駈られた私は、思わず先輩の肩に触れた。
その瞬間、電流のような鋭い痛みが指先に走る。
(……ヨモツへグイシツ者……ヨ……)
(彷徨ウ剣ノ力…黄泉二テ与エタ我ニ……其ノ御霊ヲ捧ゲヨ……)
@突然頭の中に声が聞こえた
Aこの言葉は自分自身がしゃべっているのだと気づく
B気にしない