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B「……わかってくれない?」
「もちろんわかるよ。ちゃんと、すべてが終わるまで待つつもりだし。
けど、愛菜ちゃんの気持ちはどうなのかな? 少しも俺と一緒の未来を想像できない?」
修二くんは私の手を握りながら、問いかけてくる。長くしっかりした指が、私の指に絡みついてきた。
その仕草があまりに自然で、逆に戸惑ってしまう。
(修二くんと付き合う……)
取り巻きに囲まれて、平気で何人もの女の子と同時に付き合うような修二くん。
多分、たくさんの女の子を泣かせているはずだ。
だから私は、そんな修二くんを冷ややかな目で見ていた。
でも同時に、その自由奔放な姿が気になって、目を逸らすことが出来なかった。
「あの……あのね、一つ教えて」
「ん? どうしたの」
「もし私が修二くんの彼女になるって言ったら、今まで修二くんが仲良くしていた女の子達はどうするの?」
「へぇ、妬いてくれてるんだ? 脈アリってことかな」
「そういうつものじゃ……」
「本当? ずいぶん顔が赤いけど」
わざと意地悪に囁いて、修二くんは私を覗き込んできた。
心臓が高鳴って、顔をあげることがてきない。
「愛菜ちゃんは、俺を取り巻くあの娘たちをどうして欲しい?」
「わ、わからないよ」
「俺に特定の恋人ができたとなれば、あの娘たち、きっと泣いちゃうだろうな〜」
「…………」
私は否定も肯定もできず、黙り込むことしかできない。
「愛菜ちゃんから尋ねてきたんだよ。どうして欲しいのか、ちゃんと言ってみて」
「……そんな事言われても」
「俺は愛菜ちゃんが望むようにするよ」
修二くんは俯く私の顔を、そっと指で持ち上げる。
顔をあげた視線の先には、真剣な修二くんの顔があった。
「お願いだから、俺を受け入れてよ。そしたら、すぐにあの娘たちは捨てるから」
「捨てるって……そんな簡単な問題じゃないよ」
「じゃあ、あの娘たちが居てもいいって言うんだ?」
「そ、そういう訳じゃないけど」
「俺はね。愛菜ちゃんさえ居れば、他は要らない。どうせ今までも、ただの戯れだったんだ。もうあの娘達には、何の価値もないよ」
「恋人だった女の子達でしょ。そんな言い方、酷い」
「酷いって、何? 便利だから、利用しただけ。欲しがったから、与えただけ。それだけのことじゃない。泣いてすがってくる女の子もいたけど、ウザいだけたったし。俺は人間じゃないって、罵られたこともあったけど、否定なんてしなかった。本当のことだから」
「修二くん?」
「俺は人形だ。だけど、もう兄貴の横で、道化を演じるのは沢山なんだよ」
「人形って何? 言ってくれなきゃ分からない」
「教えたくないよ。それよりも……優しい愛菜ちゃんでも、俺を道具だと……鏡としての利用価値しかないって思うのかな?」
@思う
A思わない
B考える