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@「何が見えたの?」
私は間近にある修二くんの顔を、そっと覗きこむ。
「教えたくない。だって、俺にとって肝心なのは過去じゃなく、未来だから」
震えは治まったけれど、修二くんの様子はやっぱり普通じゃない。
いつもの余裕や軽い態度が、まるで影を潜めてしまっている。
「本当にくだらない事で、面白く無い話なんだ」
「ねぇ、本当にくだらない事なの? なんだか、苦しそうだよ」
「苦しい? まさか」
修二くんは低く笑うと、私の耳元に唇を寄せた。
「……つまらない話題より、もっと楽しいことを教えてあげるよ」
耳元で、吐息ともつかない言葉を囁かれる。
その甘い囁きに身体の力が抜けて、次の言葉が出てこない。
濡れた制服から、修二くんの体温がジワリと伝わってきた。
「や……」
「怖がらないで。髪までこんなに濡れて……可哀想に」
「…やめ……て」
「この前とは違う、ちゃんとしたキスをしてあげるから」
「…じ、冗談はやめて……」
私の声を聞いて、修二くんの腕がフッと解ける。
「……また冗談で済ませるつもり?」
「し、修二くん?」
「愛菜ちゃんは……また、はぐらかすつもりなんだ」
修二くんは頭を起こして、私を見据える。その顔はいつになく苦しそうに、歪んでいた。
「はぐらかすなんて、そんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どんなつもりなのか教えてよ。やっぱり、兄貴がいい? それとも俺が嫌いなのかな?」
「違うよ」
「だったら……! なんでいつも逃げるのさ」
「修二くんは、私の中の壱与が気になっているだけなんだよ」
「前世なんて関係ないじゃん。愛菜ちゃんは俺を信じてくれるって言ったのに、どうして否定ばかりするんだ」
「否定なんて……」
「否定してるじゃないか。一体、何を考えているんだよ」
「私、ずっと不思議だった。なぜ修二くんが私にこだわるんだろうって。でも気づいたんだ。修二くんは……鏡として壱与に惹かれているんだよ」
「……どうしてそうなるんだ。愛菜ちゃんだからいいって、ずっと言ってたのに」
修二くんは呻くように呟き、再び私を見る。
「……わかった。しつこいのは嫌だし、もうこれで最後にしよう。
俺の気持ちに応えてくれる? もし駄目でも、素直な愛菜ちゃんの気持ちを教えて」
どうしよう……
@「……やっぱり無理だよ。ごめん」
A「ちょっと待って」
B考える