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A一郎くんの様子が心配、話は中断して声をかける
「顔が真っ青だよ。大丈夫?」
私は一郎くんに駆け寄り、声をかけた。
「ああ、心配ない」と私に一言呟き、また冬馬先輩に向き直った。
「剣……いや、冬馬先輩。このことは二度と言わないで欲しい。
もし万一、修二の前で言ったのなら、俺は全力であなたを倒すつもりだ」
「…………わかった」
(何、なんなの……)
「一郎くん、何がどうなって……」
「大堂。言葉にした瞬間、すべてが壊れてしまう事もある。
修二に残酷な真実を背負わせ、苦しめる必要は無い。たとえ、薄々気づいていたとしてもだ。
君にしても、力や組織の事を知ってしまったから、こんなにも辛い思いをしているのだろう。
俺のやり方が逃げだと思うのなら、それでも構わない。
だが頼む……これ以上、何も聞かないでくれ」
(一郎くん……)
一郎君の言いたいことは、正直わからない。
だけど、真剣に、誠実に言っていることだけは伝わる。
「うん。よく分からないけど、この話はおしまいにしよう。冬馬先輩もいいよね」
冬馬先輩は黙って頷く。
一郎くんは私たちの様子を見て、安心したように大きく息を吐いた。
「勝手を言って、すまない」
その時、長椅子に置いてあった私の鞄がモゾモゾと動いて地面に落ちた。
冬馬先輩は無表情のまま鞄を拾い上げ、私に手渡してくれる。
「愛菜の覚醒で、精霊が目覚めたようです」
「精霊って……チハル!」
私は鞄を受け取り、急いで開けた。
すると、ぬいぐるみのチハルがピョンと飛び出してきた。
私は……
@チハルを抱きしめる
Aチハルを撫でる
Bチハルに話しかける