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@「先輩は剣の記憶があるんですか?」
冬馬先輩は頷くと、私を見る。
「はい。……はっきりと思い出せるものは少ないですが、他の転生の記憶もあります」
「てか、理由なんて今更どーでもいいよ。この人がムカつくのに変わりは無いしさ。
それよりも……兄貴が俺にまで隠し事をするから、話がややこしくなるんだよ」
一郎君を非難する姿を見て、私はふと疑問になった事を口に出してみた。
「修二君。前世のこと、全然記憶に無いの?」
「全然ないよ。組織の一部が俺たちを鏡、この人を剣だと呼んでるって話は知ってたけどね。
ヘンな通称つけられてんなぁって思ってたけどさ」
「あれっ…だけど、剣だと組織に教えたのは二人じゃないの?」
「よく知っているな、大堂。それは、俺が言った事だ。記憶を持たない修二には知らされていないし、憶えてもいないだろう」
間を置かず、一郎君が答える。
そして、修二君をジロッと睨みながら、言葉を続けた。
「文句を言っているようだが、修二。お前、俺が説明しようとしても逃げていたじゃないか」
「そうだっけ?」
「組織の事だって、俺だけが動いて、ほとんど何もしていなかっただろう」
「でもさぁ」
「だいたい、お前が大堂に力の事を勝手に話してしまったせいで……」
「あぁ。もう、わかったよ」
一郎君と修二君のやり取りがすべてを語っているような気がする。
「じゃあ、修二君は神器のことも知らないんだね」
「神器? そういえば、さっきも愛菜ちゃんが言ってたっけ」
「うん。壱与って私の過去世が奉ってたのが三種の神器、つまり剣と鏡と勾玉なんだ。
それで、壱与が鏡を壊しちゃったから、神器の力が開放されてしまったんだよ。
元を辿れば、この能力は神様の力なんだよね」
「そうだ。俺たちはその力を最も強く受け継いだ魂だということだ」
一郎君は補足するように、言葉を付け加えた。
(壱与がしたことだけど、私のせいみたいで罪悪感あるなぁ)
ふと、冬馬先輩を見ると、黙って話しを聞いていた。
@勾玉のことを一郎君に聞いてみる
A冬馬先輩に他の転生の事について尋ねる
B時計を見る