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@冬馬先輩に自分を大事にするよう約束してもらう
「冬馬先輩、約束して? 自分を大切にするって」
「はい。あなたの命令ならば善処します」
(命令って……)
「どうしてわかってくれないの? 命令とかじゃなくて、ただ冬馬先輩が心配なんだよ。
冬馬先輩が傷つけば、私だって痛いんだよ。平気じゃないから、涙が出たんだよ!」
「痛い? なぜ……どこが痛むんですか?」
冬馬先輩は、心配そうな顔で私を覗き込む。
私は涙を拭って、自分の胸元をギッと押さえた。
「ここが痛くなるよ。すごく」
冬馬先輩の指先が導かれるように、私の胸に触れる。
一瞬、身体がビクッと強張ったけれど、私は自分の心臓にその手をおいた。
「なっ、アイツ……」
何か言いかけている修二君の前に、一郎君が割り込んでくる。
そして、修二君に向って黙ったまま首を振った。
「……兄貴、わかってるって」
修二君はそう言うと、諦めたような溜息を吐きながら長椅子に乱暴に座った。
「愛菜の鼓動が伝わってきます……」
冬馬先輩は確認するように、小さく呟く。
「冬馬先輩が自分自身を粗末にするたびに、私の心臓がズキッズキッて痛くなる。まるで自分が傷ついてしまったようにね」
「……今も痛みますか?」
「うん。先輩の額が痛むように、私のここもまだ痛いよ」
裂かれた額の皮膚から赤い血が滲み出ている。
痛々しくて思わず目を逸らしたくなるけれど、私はハンカチで溢れる血を拭っていく。
「大堂。その傷口に直接触れてみろ。今なら出来るだろう」
さっきまで黙ったままの一郎君が、突然話しかけてきた。
「自分自身を信じてみるんだ。君こそ、自分を粗末にするな」
どうしよう……
@「一体、何が出来るの?」
A触れてみる
Bためらう