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B「私は、償うために生まれてきたの?」
「……償う必要は無い。神器の力の解放は必然だったのだろう。鏡が二つに割れたのも、また必然だ」
「でも……私が神器のバランスを崩したから……」
鏡を壊したせいで、神器の力は開放され、人の魂に取り付いたのだ。
一時の激情に流されて、私は取り返しのつかない事をしてしまった。
「俺は……過去の過ちを責めるつもりで催眠療法をしたのではない。
ただ、始まりを知っておくべきだと判断したからだ。
俺達の能力は神々の呪いだ。決して歓迎すべきものではないと……それを知っていて欲しかったんだ」
「……兄貴」
言葉を選んで話す一郎君の様子に、修二君も黙り込んだ。
雨音を含んだ沈黙が部室に落ちる。
その沈黙を破ったのは意外にも一郎君だった。
「このままでは、君の力の開放は不完全なままだったな。
美波という人物が言っていたように、君自身が望まなければ力は得られない。
過去での出来事、今までの経験から君の意見を今一度問いたい。いいだろうか?」
「うん」
私は頷くと、一郎君を見た。
「声は完全に戻っていると思う。だが、それ以上の能力が欲しいのか尋ねたい。
忌わしい力だが、正しく使えば大堂の助けにもなるだろう。
もちろん誰かを傷つけることもある。時には非常さも必要だ。それでも、君は力を望むのか?」
(力……)
昨夜、隆も言っていた事だ。
使えない予知夢では誰も傷つくことはなかった。
隆は一緒に逃げようと言ってくれていたけれど、その場になったらやっばり身を挺して守ってくれると思う。
冬馬先輩は母との約束を守り、何度も私を助けてくれた。
周防さんには、命を脅かすほどの危険な目に遭わせてしまった。
チハルは今も動かないままだ。
春樹だって、私を守る力を得るために家を出て行った。
もし私が能力を得れば、頼ってばかりじゃなく、一緒に戦える。
(一郎君が言う、正しい使い方が私に出来るのかな)
(修二君はこの力の事、どう思っているんだろう)
(そういえば、幼い冬馬先輩は力を制御できず、たくさん辛い思いをしたんだっけ。私もそうなるのかな)
考えが浮かんでは消える。
@力を望む
A望まない
B修二君に話しかける