42 :
674:
「いよ」でOKだと思う
Aなぜ今まで会いにこなかったのかと怒った
「なぜ今まで会いに来てくれなかったの? ずっと待ってたんだよ!」
何度も思い描いた出会いの光景なのに、想像のように可愛く振舞えなかった。
会ったら笑って迎えようと思っていたのに、不意に出たのが恨み言だなんて子供過ぎる。
「あの……違うの、これは、えっと……」
どうにか取り繕おうとする私の傍らに、少年は微笑んだまま腰を下ろした。
その横顔は記憶していた少年より、幾分大人びている印象だった。
一年の間に、背も伸びて、体つきも男の子らしくなっていた。
「待たせて、ごめん。少し大和から離れていたから、会えなかったんだ」
「離れてたって……」
「これは僕からのお祝いだよ。壱与にとっての宝物になったら嬉しいけど……」
そう言って手渡してくれたのは、メノウの勾玉だった。
(このメノウ……もしかして……)
「出雲のメノウだよ。これで壱与が元気になってくれたらいいな」
「ど、どうして! 出雲だと知って……」
「故郷の話をしてくれた時に、もしかしてと思っていたからね。
壱与が一番喜んでくれる物は何かなって、これでも、随分考えたんだよ」
私は受け取ったメノウの勾玉をギュッと握り締める。
王国だった故郷も、この大和王権に下って十数年。今はただの一豪族に過ぎない。
メノウは王国として栄えていた故郷の誇りと、懐かしい潮の香り、なにより父と母の笑顔を運んでくれた気がした。
「ありがとう……。ずっと、ずっと大切にするから!」
「そう言ってもらえて、僕も嬉しいよ。貸して、つけてあげるから」
手が首元にまわされ、紐が結ばれる。くすぐったくて、思わず肩をすくめた。
「ごめん。嫌だった?」
「ち、違うの。続けて」
つけ終わったのを確認して、私はずっと預かっていた少年の勾玉を返した。
少し寂しいけれど、私には少年から貰った新しい宝物がある。
それから、私たちは自然とお互いの出来事を話し始める。
一年間を埋めるように、夜通し語り合った。
「あっ! 僕、もう行かなきゃ……。もっと壱与と話していたかったな」
「私も。でも、もう私は……」
(託宣の巫女になったら、簡単には会えないよね)
「そんな顔しないで。すぐにまた会えるから。それじゃ」
(あっ、行っちゃった。そういえば、また名前を聞けなかったな)
@すぐに会えると言った意味を考える
A少しでも休む
Bメノウの勾玉を見る